全国都道府県議会議長会

人口減少の克服に向けた少子化対策と地方創生の推進に関する決議

令和6年10月31日 決定

我が国の人口減少は想定を上回るスピードで進行しており、総人口は現在の約1億2,400万人から2050年(令和32年)に1億400万人程度まで減少するものと推計されている。

 この10年間、国及び地方公共団体は地方創生に取り組んできたところであるが、昨年の出生数は約72万人で過去最少、合計特殊出生率も1.20で過去最低となるとともに、東京圏への転入超過も続いている。

 こうした状況を踏まえ、国は昨年12月「こども未来戦略」を閣議決定し、「こども・子育て支援加速化プラン」を実施することとしているが、人口減少、東京圏一極集中の流れを一刻も早く食い止めるためには、これまでのように自治体間で人口を奪い合うのではなく、国全体の出生数の増加に向けて、国・地方が総力を挙げて、従来の発想を超えた大胆な施策に取り組まなければならない。

 本会としても、本年7月に設置した正副会長による地方創生懇談会において、地方創生が更に前へ進むよう具体的な提言をまとめる予定であり、国においても、若者や女性の地方定着など地方創生の取組をより一層推進していくことが求められている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

1 国は人口減少問題を最重要課題であると位置付け、人口規模や合計特殊出生率など、人口減少対策や地方創生に関する目標を示すとともに、その着実な達成に向けて国民と危機感を共有しながら国・地方が一体となって戦略的に取り組んでいくため、総合的に対策を推進するための司令塔となる組織や体制を整備すること。

2 結婚、出産、子育て、教育、住宅政策など、ライフステージを通じ社会全体で子育てを支援する力強い総合的な対策を「こども未来戦略」等に基づき着実に推進すること。

  また、各種の子育て支援策については、所得による制限やこどもの数による差を設けないようにするなど、更なる拡充を図ること。

3 少子化対策に係る経済的支援については、地方公共団体の財政力による格差が生じないよう、国の責任において全国一律で実施すること。

4 令和8年度から導入される「子ども・子育て支援金制度」については、その目的や使途、負担の在り方等について国民の理解が十分得られるよう、丁寧に周知を行うこと。

  また、「こども・子育て支援加速化プラン」の実施後も少子化対策を中長期的に推進するため、引き続き安定的な財源確保に向けて取り組むこと。

5 国が全国一律で行うこども・子育て政策の強化に伴い生ずる地方負担の財源については、国の責任において確実に確保すること。

  さらに、地方公共団体が地域の実情に応じて創意工夫を活かした独自のこども・子育て政策を実施することができるよう、必要な地方財源を確保すること。

6 所得や雇用への不安、結婚観の変化や出会いの機会の減少等から、未婚化・晩婚化が進行していることを踏まえ、非正規雇用労働者の正規雇用化など結婚につながる若者の所得増への取組の強化や、出会い・結婚をサポートする取組を継続するための支援を強化すること。

7 少子化に歯止めをかけるには、その要因の一つとも言われる、東京圏への一極集中の是正も必要であることから、地方拠点強化税制の拡充、東京圏から本社を移転した企業への交付金制度の創設等の取組により、企業や大学、政府関係機関の地方移転を推進するとともに、半導体等の成長産業の企業誘致に取り組む地方公共団体に対する支援を拡充すること。

  また、地方創生移住支援事業・起業支援事業について、移住対象者の拡大、移住元の地域の拡大、就業や起業の要件緩和など、実施状況を踏まえた運用の弾力化等を図るとともに、制度の周知を充実すること。

8 地方創生に不可欠なデジタル技術の活用には過疎地でも5G等のデジタルインフラの整備が必要であり、また、デジタル人材は東京圏に6割が集中していることから、デジタル格差が生じないよう地方における環境整備を推進するとともに、デジタル社会を支える人材の育成・確保に向けた地方の取組を支援すること。

9 東京圏での地方移住への関心の高まりを、新しい人の流れの創出につなげ、2027年度に地方と東京圏との転入・転出を均衡させるという目標の達成に向け、地方創生に関する交付金を大幅に拡充し、大学卒業後に地方へ移住する学生など若者や女性に対する支援等の取組を推進すること。

10 女性が働きやすい環境整備のため、大企業に義務付けられている男女間賃金格差の開示の対象企業の拡大及び同一労働同一賃金の更なる徹底を図るとともに、「女性デジタル人材育成プラン」の着実な実施など、男女間賃金格差の解消に向けた取組を推進すること。

11 地方創生に不可欠な地域間の交流や観光基盤の構築のため、地方におけるインフラ整備を推進するとともに、地域の実情に応じた利便性と持続可能性の高い地域公共交通の実現に向けた支援を充実すること。

以上、決議する。

 令和6年10月31日

 

                                      全国都道府県議会議長会