全国都道府県議会議長会

地域経済の持続的な成長の実現に関する決議

令和6年10月31日 決定

我が国経済は、賃上げが33年ぶりの高水準となるなど賃金と物価の好循環が回り始め、成長型経済の新たなステージに移行しつつある。また、6月の実質賃金が27か月ぶりにプラスに転じ、個人消費の持ち直しの動きが見られるなど、景気は緩やかに回復している。

 こうした前向きな動きを更に加速させるためにも、適切な価格転嫁の促進、持続的・構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大等による経済の好循環を着実に推進し、地域経済全体の持続的な成長を実現していくことが重要である。

 また、今後もエネルギー価格の高騰や電力やガスの需給ひっ迫が懸念されることに加え、世界的な食料争奪の激化等により食料安全保障上のリスクも高まっていることから、住民生活や経済活動へ与える影響を最小限に抑えるよう、迅速かつ機動的に対応することが求められている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

1 エネルギー価格が高騰する中、燃料油価格の補助の年内継続や今夏の電気・ガス料金の補助など、一定の負担抑制措置が講じられたところであるが、今後とも燃料油価格や電力・都市ガス・LPガス料金の負担抑制については、住民生活や経済活動への影響を最小限に抑えるため、全国一律の対策が講じられるよう国が責任を持って対応すること。

  また、物価高により依然として厳しい状況にある生活困窮者や事業者等への支援を着実に実施するため、新たな経済対策を早期に策定し、地域の実情に十分配慮した物価高騰対策を講ずること。

2 賃金の引上げについては一定程度なされてきたが、今後も物価上昇が続くものと見込まれることもあり、物価上昇に負けない企業における持続的・構造的な賃上げを促進するための税財政上の支援を充実すること。併せて、10月から改定される最低賃金については、過去最高の引上げ幅となったところであるが、引き続き都市と地方の格差是正に配慮しながら、更なる引上げに向けて取り組むこと。

3 地域経済を支える中小企業・小規模事業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)及びGX(グリーントランスフォーメーション)への対応、業態の転換、異業種との連携、新たな事業の創出などの取組に対する支援の強化を図ること。

  また、成長分野への労働移動が円滑に進むよう、働きながら新たなスキルを学べる環境の整備など「人への投資」に係る施策の抜本的強化を図ること。

4 物流業や建設業等において本年度から時間外労働の上限規制が適用されたことを踏まえ、人手不足に対応するため、物流業におけるドライバー等の賃金水準向上による人材確保やDXを活用した共同配送による効率化、建設業における適正な工期設定や工程合理化による生産性向上などの取組を推進すること。

5 技能実習制度から育成就労制度への移行に当たっては、外国人材が特定の産業や大都市等の特定の地域に過度に集中することのないよう十分配慮するとともに、人権侵害を防止する策を引き続き講ずること。

  また、労働や法律関係、消費生活に関する情報発信や相談体制を強化するとともに、家族も含め、日本語教育についても引き続き支援を充実すること。

6 経済安全保障の観点から、半導体産業等の成長産業について、地方への産業立地や、産学官連携による人材育成等に関する支援を強化すること。

7 旅行ニーズの多様化に対応した観光需要の喚起を図る施策を充実するとともに、円安を活かしたインバウンドの回復等に向けた施策を強力に実施し、観光消費の増大を図ること。

  また、観光を通じた地域活性化のため、地方への誘客促進を図るとともに、地方の様々な文化資源を活かした文化観光の推進への支援を充実すること。

  併せて、特定の観光地におけるオーバーツーリズムなどに配慮し、持続可能な観光を推進すること。

8 食料安全保障の強化を図るため、小麦・大豆等の穀物、肥料・飼料等の生産資材の輸入依存からの構造転換を加速させること。

  また、農林水産事業者が安心して生産に取り組めるよう、生産・流通コスト等を踏まえ、再生産に配慮した合理的な価格形成・取引を推進するための仕組みを構築するなど、稼げる農業の実現を図ること。

  併せて、世界の食料需給がひっ迫し輸入が途絶えた際に、平時に輸出している農産物を国内消費に振り向けることも想定し、農産物の更なる輸出拡大の促進を図るなど、強固な食料供給基盤の確立に向けた対策を講ずること。

以上、決議する。 

  令和6年10月31日

 

全国都道府県議会議長会