3 多様な人材が議会に参画するための環境整備等について
昨年4月に「地方議会の役割及び議員の職務等の明確化などを内容とする改正地方自治法」が成立した。
地方議会は、投票率の低下や無投票当選の増加、議員の性別や年齢構成の偏りなどの課題を抱えており、この法改正を踏まえて、議会とは何かを住民にしっかり理解いただき、女性や若者など多様な人材の議会への参画を一層進めていくことが必要である。
そのためには、昨年7月18日に採択した本会創立100周年宣言や、「多様な人材が輝く議会のための懇談会」が本年3月取りまとめた「17の提言」等を踏まえ、各議会が、議会の審議、議会活動について更なる改革に努め議会の活性化を図り、議会の重要な役割について将来の地方自治を担うこどもたちを含め、広く住民に理解が得られるよう取り組んでいかなければならない。
中でも、いわゆる主権者教育の取組は重要であり、地方議会に関する地方自治法改正を踏まえた主権者教育を国民運動として取り組んでいくことが必要である。
また、デジタル化が進む中で、デジタルツールを活用し、議会から住民へのわかりやすい情報提供、議会と住民との双方向コミュニケーションにより政策議論が更に活性化するよう取り組むとともに、多様な議員が活躍できる環境整備のため、育児・介護等と議員活動の両立支援、ハラスメント防止対策等の取組を行っていくことが一層重要となっている。
さらに、地方分権改革により地方議会の役割と責任はますます高まっており、議会がその責任を果たしていくためにも、議長が議会を招集することを可能とするなど、更なる議会制度の改革が必要である。
よって、次の措置を講ぜられたい。
(1) 議会に対する関心を高め、理解を深める主権者教育を一層推進すること。推進に当たっては、議会自らが主体的に行う主権者教育の取組に対する支援を講ずること。
(2) デジタル技術の活用等により、多くの住民の声を反映した活力ある地方議会を実現するため、議会のデジタル人材の確保や、議会のデジタル化の取組に必要な技術的・財政的支援を行うこと。
また、オンラインによる本会議への出席については、第33次地方制度調査会答申で指摘された課題について検証と検討を行い、その実現に向けて所要の措置を講ずること。
(3) 立候補に伴う企業等による休暇を保障し、不利益な取扱いを禁止するための必要な法改正を行うとともに、厚生年金の適用拡大が進んでいる状況を踏まえ、厚生年金への地方議会議員の加入を実現し、会社員等が議員に転身しても切れ目なく社会保障制度を継続できるようにすること。
(4) 令和3年に改正された「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」に基づき地方公共団体が実施する議員活動と出産・育児・介護の両立支援のための体制整備、ハラスメント防止に係る研修実施や相談体制の整備などの取組に対する支援を講ずること。
(5) 都道府県議会議員の選挙区設定において、現行制度上、基本的に設定できない市と市の合区について地域の実情に応じてできるようにするとともに、人口が少ない地域の議員定数の確保策について検討を行うこと。
(6) 議会の招集権については、議会の代表者である議長に付与すること。
(7) 各地方公共団体の幅広い住民サービスの方針である予算の決定に当たっては、地方議会が当該団体の意思決定を行う場であることを踏まえ、予算修正権の制約を見直すこと。
(8) 議会の監視機能を強化するため、政令で定められている議決を要する契約の種類・金額、財産の取得・処分に係る面積・金額の基準について、各地方公共団体が条例で定めることができるようにすること。
(9) 地方議会の意見書については、地方の問題解決に対する切実な思いが込められていることから、国会及び政府において積極的に活用し、その活用結果を公表すること。
また、各省庁は地方議会からの意見書のオンライン提出が可能となるよう、受理体制を整備すること。