全国都道府県議会議長会

1 食料安全保障の強化について

令和6年10月31日 決定

世界的な人口急増による食料需要の増加、気候変動や地政学的リスクの高まりを要因とした食料生産及びサプライチェーンの不安定化、さらにはエネルギー・生産資材や農林水産物の輸入価格の高騰などにより、近年我が国における食料安定供給に対するリスクが高まっている。

 こうした中、本年5月に改正された食料・農業・農村基本法の基本理念にも位置付けられている国民一人一人の食料安全保障を将来にわたって確保するためには、今こそ、国内農業生産の増大を基本とした強固な食料供給基盤の確立及び食料自給率の向上を図る施策を強力に推進することが求められている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 新たな食料・農業・農村基本計画については、地域の農業・農村の実情を踏まえて策定し、食料安全保障の強化に向けた実効性のある施策の充実を図ること。

(2) 生産・流通コストの上昇分に応じた合理的な価格形成のための仕組みの法制化等、農林水産事業者が安定的な経営を展開できる環境整備を推進すること。

また、合理的な価格形成が食料の持続的な供給につながることを消費者に発信し、国産の農畜水産物が積極的に選ばれるよう、消費者の理解醸成に努めること。

(3) 米は100%自給可能であり、食料安全保障の一端を担うものでもあるため、真に実効性のある消費喚起を行うなど、需要拡大を推進すること。

また、加工用米や米粉用米の品種開発や生産、ニーズが高まっているパックご飯や米粉パンなどの米加工品の開発や販売、輸出拡大への支援を充実させること。

(4) 生産者や集荷業者・団体が主体的に需要に応じた作付け判断ができるよう、米の需給に関する情報提供を行う等、引き続き国が米の需給及び価格の安定に対する役割を果たすこと。

また、今夏に小売店等で米の品薄状態や価格高騰が発生したことを踏まえ、消費者への米の円滑な流通の確保を図ること。

なお、ミニマムアクセス米の販売に当たっては、加工用米の需給に影響を与えないよう、対策を講ずること。

さらに、米の現物市場においては、需給実態を的確に反映した価格指標を示すことができるようにすること。

(5) 麦・大豆の生産拡大及び品質の安定化を図るため、作付の団地化及び生産性向上に資する技術・機械や優れた加工適性を持つ品種の導入などへの支援を充実すること。

また、国産原材料の利用拡大に取り組む食品事業者への支援を充実すること。

(6) 肥料、飼料等の生産資材や燃油、ガスの価格高騰の影響を受ける農林水産事業者への支援を継続・拡充すること。また、輸入依存の高い生産資材については、国内資源の活用促進や備蓄等による安定的な供給体制の整備を強化するとともに、省エネルギー化に取り組む生産者に対しての支援を充実させること。

なお、飼料用米については、種子の確保対策等による支援を継続することに加え、保管・流通施設等の確保に向けた支援の充実・強化など飼料用米の生産や利活用に取組やすい環境を総合的に整備すること。

(7) 経済連携交渉、WTO農業交渉等の国際貿易交渉に当たっては、食料の安定供給、食料自給率の維持及び農林水産物の国内生産量等に配慮し、農林水産業に影響を及ぼすことのないよう臨むこと。

また、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、日EU経済連携協定(日EU・EPA)、日米貿易協定及び地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に伴う農林水産業への影響を継続的に検証するとともに、「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく政策等万全の対策を講ずること。

(8) 食品の売れ残りや食べ残しによる食品ロスを削減するため、「てまえどり」等が促進されるよう、消費者の意識向上を図るための啓発を強化すること。

また、加工食品等の食品ロスを削減するため、消費者に対し賞味期限への理解を深める啓発を行うこと。

さらに、フードバンク活動を行う団体がこども食堂等に食品の提供をしやすくするため、広域的な連携による食品の受入・提供の拡大などの取組に対する支援を充実すること。