人口減少に打ち勝つ新たな地方創生の推進に関する決議
我が国の人口減少は想定を上回るスピードで進行しており、総人口は現在の約1億2,400万人から2050年(令和32年)に1億400万人程度まで減少するものと推計されている。
これまで、国及び地方公共団体は地方創生に取り組んできたところであるが、昨年の出生数は約68万人で過去最少、合計特殊出生率も1.15で過去最低を更新するとともに、東京圏への転入超過も続いている。
こうした状況を踏まえ、国は「こども・子育て支援加速化プラン」に基づく支援策を実施しているところであり、また、本年6月には「地方創生2.0基本構想」を閣議決定し、早期に様々な取組に着手することとしている。
基本構想には、本会が正副会長による懇談会の議論を経て1月に決定した地方創生に関する決議を踏まえた内容が一定程度、反映されたところであるが、人口減少、東京圏一極集中の流れを一刻も早く食い止めるためには、これまでのように自治体間で人口を奪い合うのではなく、国全体の出生数の増加に向けて、国・地方が総力を挙げて、基本構想に沿った若者や女性にも選ばれる地域づくり等の施策に取り組まなければならない。
よって、次の措置を講ぜられたい。
1 人口減少に対する危機感を国民と共有するため、東京と地方の位置付け・役割等の考え方、全国や東京圏の人口規模、出生数等も含めた数値目標、達成期限を明示するとともに、地方の意見を十分反映しながら新たな総合戦略を策定し、各分野における対策を強力に推進すること。
2 少子化に歯止めをかけるには、その要因の一つとも言われる、東京圏への一極集中の是正も必要であることから、人や企業の地方分散を図るため、政府関係機関の移転について地方からの提案を待つことなく、自ら具体的な検討を行うとともに、国立大学を地方に移転するほか、地方拠点強化税制の拡充、東京圏から本社を移転した企業への交付金制度の創設、法令による規制等を通じて企業の工場、本社機能や私立大学の地方移転を促進すること。
3 若者や女性にも選ばれ、定着する地域をつくるため、新しい地方経済・生活環境創生交付金を最大限活用し、地方の産業育成、教育環境向上、関係人口の拡大等による地域の持続可能性向上などに関する取組を推進することができるよう、交付対象の拡大、申請手続の簡素化等の弾力的で柔軟な取扱いを図ること。
また、地方創生移住支援事業・起業支援事業について、移住対象者の拡大、移住元の地域の拡大、就業や起業の要件緩和など、実施状況を踏まえた運用の弾力化等を図るとともに、制度の周知を充実すること。
4 女性が働きやすい環境整備のため、固定的な性別役割分担のアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)の解消に向けた啓発や起業支援の充実を図ること。
また、大企業に義務付けられている男女間賃金格差の開示の対象企業の拡大及び同一労働同一賃金の更なる徹底を図るとともに、「新・女性デジタル人材育成プラン」等による就労につながるリ・スキリング支援の着実な実施など、男女間賃金格差の解消に向けた取組を推進すること。
5 地方で暮らすこと等に関する若者の意識の変容を促すため、地方に残りたい、戻りたいと思うことができるよう、地域への愛着や誇り、郷土愛を育む上で重要な役割を担う学校教育における地域の探求や体験学習などの取組を推進すること。
6 所得や雇用への不安、結婚観の変化や出会いの機会の減少等から、未婚化・晩婚化が進行していることを踏まえ、非正規雇用労働者の正規雇用化など結婚につながる若者の所得増への取組の強化や、出会い・結婚をサポートする取組を継続するための支援を強化すること。
また、個人の多様な価値観を尊重した上で、結婚、家庭・こどもを持つことに希望が持てるような前向きな情報発信を行うこと。
7 結婚、出産、子育て、教育、住宅政策など、ライフステージを通じ社会全体で子育てを支援する力強い総合的な対策を「こども未来戦略」等に基づき着実に推進すること。
また、各種の子育て支援策については、所得による制限やこどもの数による差を設けないようにするなど、更なる拡充を図ること。
8 少子化対策に係る経済的支援については、地方公共団体の財政力による格差が生じないよう、国の責任において全国一律で実施すること。
また、国が全国一律で行うこども・子育て政策の強化に伴い生ずる地方負担の財源については、国の責任において確実に確保すること。
さらに、地方公共団体が地域の実情に応じて創意工夫を活かした独自のこども・子育て政策を実施することができるよう、必要な地方財源を確保すること。
9 東京が引き続き国際競争の最前線において我が国の経済をけん引する重要な役割を果たすことができることを前提として、東京圏への過度な人口集中による弊害を解消するためにも、地方からの人口流出を抑制し、都市とともに地方が元気になり、全国どこでも快適でゆとりある社会生活を送ることができる人口分布に近づいていくことは我が国全体の国益にも資するものと考えられる。
このため、各地域が交通ネットワークでつながるための地方への大胆な公共投資などを促進すること。
以上、決議する。
令和7年7月23日