全国都道府県議会議長会

地域経済の持続的な成長の実現に関する決議

令和7年7月23日 決定

 我が国経済は、賃上げが前年を上回る高水準となり、企業収益も改善の傾向にあったが、5月の実質賃金は前年同月比2.9%減と5か月連続で減少し、さらに、米国の関税措置により先行きの不透明感が強まり、景気の下振れリスクが高まっている。こうした不確実性の高い社会情勢にあっても、適切な価格転嫁の促進、持続的・構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大等による経済の好循環を着実に推進し、地域経済全体の持続的な成長を実現していくことが重要である。
 また、今後もエネルギー価格の高騰や電力の需給ひっ迫が懸念されることに加え、世界的な食料争奪の激化等により食料安全保障上のリスクも高まっていることから、住民生活や経済活動へ与える影響を最小限に抑えるよう、迅速かつ機動的に対応することが求められている。
よって、次の措置を講ぜられたい。

1 米国との関税措置の合意については、サプライチェーンを通じ、あらゆる分野に影響が及ぶことから、地方の産業や雇用等に対する影響を最小限とするための対策を講ずること。

2 食料安全保障の強化を図るため、主食である米について、急激に高騰した価格を落ち着かせ、全国の消費者に十分行きわたらせることができるよう、円滑な流通を確保するとともに、丁寧な情報発信を続けること。併せて、生産者が意欲を持って生産を行い、経営を持続することができるよう、需給及び価格の安定を図るための対策を国が責任を持って実施すること。
  さらに、小麦・大豆等の穀物、肥料・飼料等の生産資材の輸入依存からの構造転換を加速させること。
  また、農林水産事業者が安心して生産に取り組めるよう、生産・流通コスト等を踏まえ、再生産に配慮した合理的な価格形成・取引を推進するための仕組みを構築するなど、稼げる農業の実現を図ること。
  併せて、世界の食料需給がひっ迫し輸入が途絶えた際に、平時に輸出している農産物を国内消費に振り向けることも想定し、農産物の更なる輸出拡大の促進を図るなど、強固な食料供給基盤の確立に向けた対策を講ずること。

3 エネルギー価格が高騰する中、燃料油価格の補助や今夏の電気・ガス料金の補助など、一定の負担抑制措置が講じられているところであるが、今後とも燃料油価格や電力・都市ガス・LPガス料金の負担抑制については、住民生活や経済活動への影響を最小限に抑えるため、全国一律の対策が講じられるよう国が責任を持って対応すること。
  また、物価高により依然として厳しい状況にある生活困窮者や事業者等への支援として、地域の実情に十分配慮した機動的な物価高騰対策を講ずること。

4 賃金の引上げについては一定程度なされてきたが、今後も物価上昇が続くものと見込まれることもあり、物価上昇に負けない企業における持続的・構造的な賃上げを促進するための税財政上の支援を充実すること。併せて、最低賃金については、引き続き都市と地方の格差是正に配慮しながら、更なる引上げに向けて取り組むこと。

5 DX及びGXへの対応、業態転換、新たな事業の創出などの取組に対する支援の強化を図ること。
  また、成長分野への労働移動が円滑に進むよう、働きながら新たなスキルを学べる環境の整備など「人への投資」に係る施策の抜本的強化を図ること。
 
6 中小企業・小規模事業者の人材を確保するため、若者、女性、高齢者、障害者、外国人など、多様な人材がそれぞれのライフステージ等に応じた柔軟な働き方の下でその能力を発揮できる環境を整備すること。

7 技能実習制度から育成就労制度への移行に当たっては、外国人材が特定の産業や大都市等の特定の地域に過度に集中することのないよう十分配慮するとともに、人権侵害を防止する施策を引き続き講ずること。
  また、労働や法律、消費生活に関する情報発信や相談体制を強化するとともに、家族も含め、日本語教育についても引き続き支援を充実すること。

8 経済安全保障の観点から、半導体産業等の成長産業について、地方への産業立地や、産学官連携による人材育成等に関する支援を強化すること。

9 旅行ニーズの多様化に対応した観光需要の喚起を図る施策を充実するとともに、インバウンドの増加等に向けた施策を強力に実施し、観光消費の増大を図ること。
  また、観光を通じた地域活性化のため、地方への誘客促進を図るとともに、地方の様々な文化資源を活かした文化観光の推進への支援を充実すること。
  併せて、特定の観光地におけるオーバーツーリズムなどに配慮し、持続可能な観光を推進すること。

 以上、決議する。

 令和7年7月23日

全国都道府県議会議長会