全国都道府県議会議長会

2 地方税財源の充実強化について

令和7年7月23日 決定

 地方公共団体は、人口減少や少子高齢化の急速な進行により、地域の担い手や技術職等の専門人材不足が深刻な中でも、行政サービスを安定的に提供し、その上で地域の実情に応じて創意工夫を凝らしながら、活力のある持続可能な地域社会を実現する必要がある。
 一方で、地方財政は人件費の上昇、物価高、金利上昇等の歳出増の要因が拡大し、これまでのように人件費や投資的経費等の削減により社会保障関係費の増を吸収するという構造から大きく変化している。
 さらに、米国の関税措置が地方財政に及ぼす影響も見通せない状況が続いている。
 このような状況の変化に的確に対応し、今後も地方公共団体が少子化対策やDX・GXの推進、地域経済の活性化、防災・減災対策の強化や老朽化するインフラ整備等の取組を着実に推進することができるよう、地方税財源の充実確保を図る必要がある。
 よって、次の措置を講ぜられたい。


(1) 地方が責任を持って、地域の実情に沿ったきめ細かな行政サービスを十分担えるよう、人件費や物価高騰対策、社会保障関係費など、今後も増大する財政需要を適切に地方財政計画に反映するとともに、安定的な財政運営に必要な地方一般財源総額を増額確保すること。
(2) いわゆる年収の壁の更なる見直しや、ガソリン税の暫定税率の廃止については、地方財政への影響に十分配慮した上で、地方公共団体からの意見も交えた丁寧な議論を行うこと。
(3) 生活困窮者や事業者等への支援、物価高騰対策など、目下の経済情勢に対応した取組を機動的に行えるよう、必要な財政措置を講ずること。
(4) 地方交付税については、引き続き、財源保障機能と財源調整機能の両機能が適切に発揮できるよう、その総額を確保すること。また、法定率の引上げを含めた抜本的な改革を行うこと。
臨時財政対策債については、新規発行額ゼロを継続するとともに、償還財源を確実に確保すること。さらに、中長期的な視点で、臨時財政対策債等の特例措置に依存しない持続可能な制度を確立すること。
(5) 地方が担っている役割と責任に見合うよう、地方税の一層の充実を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収の安定性を備えた地方税体系を構築すること。
(6) 国が全国一律で行うこども・子育て政策の強化に伴い生ずる地方負担の財源については、国の責任において確実に確保すること。
   さらに、地方公共団体が地域の実情に応じて創意工夫を活かした独自のこども・子育て政策を実施することができるよう、必要な歳出を地方財政計画に計上すること。
(7) 地方公共団体の基金は、災害や公共施設等の老朽化対策、税収減等不測の事態への機動的な財政運営の備えとして、行財政改革や歳出抑制を進めることにより造成したものであり、その残高をもって一律に地方財政計画の圧縮や地方交付税の削減を行わないこと。
(8) 電気供給業、ガス供給業などに対する収入金額課税は、受益に応じた負担を求める外形課税として定着し、地方税収の安定化に大きく貢献しているとともに、電気事業は大規模発電施設等、ガス事業は液化ガス貯蓄設備等を有し、事業活動に当たり多大な行政サービスを受益していることから、現行制度を堅持すること。
(9) 今後の自動車関係税の見直しに当たっては、電気自動車の比重が大きくなる中、自動車税が財産税的な性格や道路損傷等に係る負担金的な性格を有することも念頭に置き、引き続き、地方公共団体にとって道路の整備・維持管理に関する財政需要が高いことから必要な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう留意すること。
(10) ゴルフ場利用税については、アクセス道路の整備・維持管理、ゴルフ場から排出されるごみ処理、地すべり対策等の災害防止対策等、特有の行政需要に対応していること、また、その税収の7割が所在市町村に交付金として交付されており、特に財源に乏しい中山間地域の当該市町村にとっては貴重な財源となっていることから、現行制度を堅持すること。
(11) 地方たばこ税は、地方の貴重な一般財源であることから、各団体が分煙施設の整備等に取り組むことを前提として、地方財政に影響を与えないよう、現行制度を堅持すること。