全国都道府県議会議長会

1 地域経済の持続的な成長の実現について

令和7年7月23日 決定

 我が国経済は、賃上げが前年を上回る高水準となり、企業収益も改善傾向にあったが、5月の実質賃金は前年同月比2.9%減と5か月連続で減少し、さらに、米国の関税措置により先行きの不透明感が強まり、景気の下振れリスクが高まっている。
 こうした不確実性の高い社会情勢にあっても、適切な価格転嫁の促進、持続的・構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大等による経済の好循環を着実に推進し、地域経済全体の持続的な成長を実現していくことが重要である。
 また、今後もエネルギー価格の高騰、電力の需給ひっ迫が懸念されるため、国民生活や経済活動へ与える影響を最小限に抑えるよう、迅速かつ機動的に対応することが求められている。
 よって、次の措置を講ぜられたい。


(1) 米国との関税措置の合意については、サプライチェーンを通じ、あらゆる分野に影響が及ぶことから、地方の産業や雇用等に対する影響を最小限とするための対策を講ずること。
(2) エネルギー価格が高騰する中、燃料油価格の補助や今夏の電気・ガス料金の補助など、一定の負担抑制措置が講じられているところであるが、今後とも燃料油価格や電力・都市ガス・LPガス料金の負担抑制については、住民生活や経済活動への影響を最小限に抑えるため、全国一律の対策が講じられるよう国が責任を持って対応すること。
    また、物価高により依然として厳しい状況にある生活困窮者や事業者等への支援として、地域の実情に十分配慮した機動的な物価高騰対策を講ずること。
(3) 賃金の引上げについては一定程度なされてきたが、今後も物価上昇が続くものと見込まれることもあり、物価上昇に負けない企業における持続的・構造的な賃上げを促進するための税財政上の支援を充実すること。併せて、最低賃金については、引き続き都市と地方の格差是正に配慮しながら、更なる引上げに向けて取り組むこと。
(4) 税・社会保障制度上のいわゆる「年収の壁」については、一定の引き上げがなされたところではあるが、引き続き短時間労働者がこれを意識して労働時間を抑えることがないよう、労働者本人の希望に応じて働くことができる環境の整備を一層推進すること。
     また、女性が働きやすい環境整備のため、大企業に義務付ける男女間賃金格差の開示の対象企業の拡大及び同一労働同一賃金の更なる徹底を図るとともに、「新・女性デジタル人材育成プラン」の着実な実施など、男女間賃金格差の解消に向けた取組を推進すること。
(5) DX及びGXへの対応、業態転換、新たな事業の創出などの取組に対する支援の強化を図ること。
     また、成長分野への労働移動が円滑に進むよう、新たなスキルを学ぶリ・スキリングを可能とする環境の整備など「人への投資」に係る施策の抜本的強化を図ること。
(6) 地方において幅広い仕事ができる社会を実現するため、スタートアップやイノベーションを担う若い人材に対する支援を推進するとともに、地方での創業支援等、地方の経済発展に資する施策を重点的に実施すること。