1 食料安全保障の強化について
世界的な人口急増による食料需要の増加、気候変動や地政学的リスクの高まりを要因とした食料生産及びサプライチェーンの不安定化、さらにはエネルギー・生産資材や農林水産物の輸入価格の高騰などにより、近年我が国における食料安定供給に対するリスクが高まっている。
また、昨夏以降、小売店等における米の品薄状態及び価格高騰が発生し、消費者までの流通の安定化が強く求められているほか、米国の関税措置による国内農林水産業・食品産業への影響が懸念されている。
こうした中、国民一人一人の食料安全保障を将来にわたって確保するためには、国内農業生産の増大を基本とした強固な食料供給基盤の確立及び食料自給率の向上を図る施策を強力に推進することが必要である。
よって、次の措置を講ぜられたい。
(1) 我が国の食料安全保障の要である米について、急激に高騰した価格を落ち着かせ、全国の消費者に十分行きわたらせることができるよう、円滑な流通を確保するとともに、丁寧な情報発信を続けること。
また、生産者が意欲を持って生産を行い、経営を持続することができるよう、需給及び価格の安定を図るための対策を国が責任を持って実施すること。
なお、ミニマムアクセス米の販売に当たっては、国産米の需給に影響を与えないよう、対策を講ずること。
(2) 米国との関税措置の合意に伴い、農林水産物や食品の輸出入に関し大きな影響を受ける国内の事業者等に対して支援を講ずること。
(3) 新たな食料・農業・農村基本計画の推進に当たっては、地域の農業・農村の実情に配慮しながら、食料自給率の向上等を通じて食料安全保障が確保されるよう、関係施策の実施に必要な予算を十分に確保すること。
(4) 食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の改正を踏まえ、生産・流通コスト等に応じた合理的な価格形成により農林水産事業者が安定的な経営を展開できる環境の整備を推進すること。
また、合理的な価格形成が食料の持続的な供給につながることについて消費者の理解醸成に努めるとともに、国産農林水産物の需要拡大や高付加価値化に係る予算を十分に確保すること。
(5) 麦・大豆の生産拡大及び品質の安定化を図るため、作付の団地化及び生産性向上に資する技術・機械や優れた加工適性を持つ品種の導入などへの支援を充実すること。
また、国産原材料の利用拡大に取り組む食品事業者への支援を充実すること。
(6) 肥料、飼料等の生産資材や燃油、ガスの価格高騰の影響を受ける農林水産事業者への支援を継続・拡充すること。また、輸入依存の高い生産資材については、国内資源の活用促進や備蓄等による安定的な供給体制の整備を強化するとともに、省エネルギー化に取り組む生産者に対しての支援を充実させること。
なお、飼料用米については、種子の確保対策等による支援を継続することに加え、保管・流通施設等の確保に向けた支援の充実・強化など飼料用米の生産や利活用に取り組みやすい環境を総合的に整備すること。
(7) 経済連携交渉、WTO農業交渉等の国際貿易交渉に当たっては、食料の安定供給、食料自給率の維持及び農林水産物の国内生産量等に配慮し、農林水産業に影響を及ぼすことのないよう臨むこと。
また、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、日EU経済連携協定(日EU・EPA)及び地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に伴う農林水産業への影響を継続的に検証するとともに、「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく政策等万全の対策を講ずること。
(8) 食品の売れ残りや食べ残しによる食品ロスを削減するため、「てまえどり」等が促進されるよう、消費者の意識向上を図るための啓発を強化すること。
また、加工食品等の食品ロスを削減するため、消費者に対し賞味期限への理解を深める啓発を行うこと。
さらに、フードバンク活動を行う団体がこども食堂等に食品の提供をしやすくするため、広域的な連携による食品の受入・提供の拡大などの取組に対する支援を充実すること。