1 地域経済の持続的な成長の実現について
我が国経済は、賃上げが前年を上回る高水準となり、最低賃金も大幅に引き上げられたほか、企業による設備投資も増加を続けるなど、経済の好循環が拡大しつつある。また、米国の関税措置については、合意内容に関する大統領令の発出により、今後の不透明感が緩和されたものの、米国への輸出に従来より高い関税率が課され、経済成長を下押しする圧力となるなど、経済・物価動向を巡る動きを見通すことがなお難しい状況が続いている。
こうした不確実性の高い社会情勢にあっても、適切な価格転嫁の促進、持続的・構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大等による経済の好循環を着実に推進し、地域経済全体の持続的な成長を実現していくことが重要である。
さらに、今後もエネルギー価格の高騰、電力の需給ひっ迫が懸念されるため、国民生活や経済活動へ与える影響を最小限に抑えるよう、迅速かつ機動的に対応することが求められている。
よって、次の措置を講ぜられたい。
(1) 物価高騰の長期化により国民生活が苦しい状況にあることを踏まえ、燃料油価格、電気・ガス料金の全国一律の負担抑制措置、生活困窮者や中小企業・小規模事業者に対する重点的な支援など、地域の実情に応じた機動的な支援策を盛り込んだ経済対策を早期に実施すること。
(2) 米国との関税措置の合意については、サプライチェーンを通じ、あらゆる分野に影響が及ぶことから、資金繰りの支援等、地方の産業や雇用等に対する影響を最小限とするための対策を講ずること。
(3) 賃金の引上げについては一定程度なされてきたが、今後も物価上昇が続くものと見込まれることもあり、物価上昇に負けない企業における持続的・構造的な賃上げを促進するための税財政上の支援を充実すること。併せて、最低賃金については、過去最高の引上げ幅となったところであるが、引き続き都市と地方の格差是正に配慮しながら、更なる引上げに向けて取り組むこと。
(4) 税・社会保障制度上のいわゆる「年収の壁」については、一定の引上げがなされたところではあるが、引き続き短時間労働者がこれを意識して労働時間を抑えることがないよう、労働者本人の希望に応じて働くことができる環境の整備を一層推進すること。
また、女性が働きやすい環境整備のため、大企業に義務付ける男女間賃金格差の開示の対象企業の拡大及び同一労働同一賃金の更なる徹底を図るとともに、「新・女性デジタル人材育成プラン」の着実な実施など、男女間賃金格差の解消に向けた取組を推進すること。
(5) DX及びGXへの対応、業態転換、新たな事業の創出などの取組に対する支援の強化を図ること。
また、成長分野への労働移動が円滑に進むよう、新たなスキルを学ぶリ・スキリングを可能とする環境の整備など「人への投資」に係る施策の抜本的強化を図ること。
(6) 地方において幅広い仕事ができる社会を実現するため、スタートアップやイノベーションを担う若い人材に対する支援を推進するとともに、地方での創業支援等、地方の経済発展に資する施策を重点的に実施すること。
