全国都道府県議会議長会

人と動物の健康、環境の健全性を一体的に守るワンヘルスの実現に向けた取組の推進に関する決議

令和8年7月22日 決定

 近年、気候変動に伴い世界各地で大規模自然災害が頻発し、人や動物の生命が脅かされるとともに、世界的規模で進む無秩序な開発や都市化による生態系の損失、環境汚染等により、地球環境は重大な危機に瀕している。
 また、人と動物の生活環境や自然環境が大きく変化した影響により、人と動物との間でも感染する人獣共通感染症の脅威も増加している。
 このように、人と動物の健康、環境の健全性は密接に結びついており、不可分の関係にあることから、これらを一つの健康と捉え、一体的に守っていくという「ワンヘルス(One Health)」の理念に基づき、医学と獣医学、環境科学等の分野を超えて総力を結集し、各般の取組を推進していくことが求められている。
 さらに、ワンヘルスの取組は、人々の生活環境の変化や進化を必要とするものであることから、これに伴う新たな産業の創出や技術革新なども期待されるところであり、我が国の経済成長にも資するものである。
 折しも、本年2月、高市総理が施政方針演説において国策としてワンヘルスの取組を推進する旨を表明するとともに、4月には31年ぶりの日本開催となる世界獣医師会大会が東京で開催され、「ワンヘルス東京宣言2026」が採択されるなど、ワンヘルスの実践的な取組を広げていく社会的機運が高まっている。
 よって、次の措置を講ぜられたい。

1 ワンヘルスの理念と実践活動について普及啓発の取組を推進するとともに、あらゆる世代に向けたワンヘルス教育や、イベント・国際会議の開催等に関する支援を講ずること。
  また、医師、獣医師、学術研究機関、企業、各種団体、行政など幅広い主体によるワンヘルスに関する分野横断的な連携の取組を促進すること。

2 家畜・家禽のほか、愛玩動物(ペット)及び野生動物を含む全ての動物の感染症等の調査研究、防疫等を統合して実施できるよう、「家畜保健衛生所法」を「動物保健衛生所法(仮称)」に改正すること等により、動物の保健衛生を一元的に担う体制を確立すること。

3 人獣共通感染症に対する防疫対策の強化や予防及び治療に関する研究と診療体制の充実並びにこれらを担う人材の育成を推進するため、ワンヘルスの観点から感染症対策を一元的に担う組織体制を強化し、所要の法改正等を行うこと。

4 ワンヘルスに関わる国際機関や各県の地方衛生研究所等との連携を含めた大きなネットワークのハブとなり、国立健康危機管理研究機構の現場対応機能の一翼を担う「アジア新興・人獣共通感染症センター(仮称)」を早期に整備すること。

5 家畜伝染病の中には高病原性鳥インフルエンザなど人獣共通感染症もあり、ワンヘルスの理念に基づく対策が重要であることから、農場における更なる飼養衛生管理の向上や、農場の分割管理に必要となる施設整備・機械導入等に対して十分な予算を確保するなど、家畜伝染病の防疫・検疫体制の強化を図ること。

6 家畜衛生、公衆衛生及び産業動物診療等の現場の中核を担い、人獣共通感染症対策においても重要な役割を果たしている勤務獣医師の職責と業務量が増大する中、その人材確保が全国的な課題となっていることから、現下の公務員獣医師を始めとする勤務獣医師に求められている高度な専門能力と判断力にふさわしい処遇とするため必要な措置を講ずること。

7 マダニが媒介し、愛玩動物や飼い主、獣医師や医師にも感染するおそれのあるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)等の人獣共通感染症について、国民や獣医療・医療関係者などに対して更なる注意喚起を図るとともに、感染予防の取組に対する支援を講ずること。

8 抗菌薬が効かなくなる薬剤耐性菌による感染症のまん延を防止するため、抗菌薬の用法用量を守る適正使用について周知徹底を図るとともに、コストの回収が困難とされている抗菌薬の開発や、新たな治療法の確立に対する支援を講ずること。

9 地球温暖化を食い止める脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大や、各分野における省エネ対策の一層の促進を図ること。
また、環境への負荷、生物多様性に配慮した農業や森林開発、自然保護にも資するオーバーツーリズム対策、プラスチックごみの排出抑制など、環境保護に関する各般の取組を推進すること。

10 犬や猫、鳥などの愛玩動物については、日頃からの衛生管理、健康診断や狂犬病等の予防接種の受診など、適正飼養の順守を促進すること。
野生動物については、感染症対策等の観点から、むやみに触れない、餌付けをしないなど、適切な接し方を周知すること。クマについては、「クマ被害対策ロードマップ」に基づき、出没時の緊急対応や人の生活圏への出没防止などの取組を着実に推進するとともに、人とクマの共生の実現に向けてクマの生息環境の保全・整備などに取り組むこと。

11 森林浴やドッグセラピーなど自然や動物との触れ合いによるストレス軽減や健康増進の効果を踏まえ、自然体験活動、アニマルセラピーなどの取組に対する支援を講ずること。

12 人の健康に大きく関わる「食」について、環境に配慮して生産された農作物・水産物の消費、地産地消、食品ロス削減などの取組を推進すること。

13  ワンヘルスの視点を反映した取組によって企業価値や業績の向上につながるよう、経済団体や大学、行政等の幅広い連携による新たな産業の創出や技術革新などに関する支援を充実すること。

以上、決議する。

令和8年7月22日

全国都道府県議会議長会