主権者教育に請願権を。

群馬県議会議長
須藤 和臣
かつて、米国のオレゴン州のポートランド市の市議会に伺いました。
州都ポートランドは約60万人の都市ですが、市議会議員はたったの4名。日本の地方議会とは制度がまるで異なり、住民から選挙で選ばれこの4名の議員は、それぞれ建設や教育、保健福祉など、担当部が振り分けられ、行政側の部長も兼ねていました。
市議会は、毎週水曜日に議場で開かれており、質問に立つのは市民の方です。中央の議長席には市長が座り、両側の席には議員が二人ずつ座ります。その様子は、まるで裁判のようです。実際、裁判官が使用するたたき棒が議長席にありました。
市長が裁判長となり、議員が裁判官となり、市民の意見をジャッジするのです。裁判官たる議員は行政側の部長を兼務しているため、願意妥当とジャッジされた際には、行政側において速やかに執行されることになるのでしょう。民主主義における議会の権能は、市民の意見を「ジャッジ」することにあると確信をした瞬間でした。
日本にも請願制度が確立されております。請願権は、投票権と同様に、国民の参政権の一つであると思います。投票権と対象が違い、日本国の住民であれば、18歳以下の子供でも、外国籍の方でも請願権を有します。
一方、議会は請願受理権、請願審査権を有しております。審査の後、願意妥当と議会が採択をすれば、行政側はその請願を重く受け止め、執行する努力が求められます。また、その結果を議会に報告する義務も生じます。
しかし、住民の方々で、請願権のことを正しく認識していらっしゃる方は少ないのではないでしょうか。法改正により18歳以上に投票権が導入されたことに伴い、若い方々への投票の呼びかけが盛んに行われています。また、三議長会においても、主権者教育を重視しております。私は、請願権の普及も一緒に取り組んでいくことが、日本のより良い民主主義制度を確立していくうえで、重要なことであると認識いたします。
議会が請願を多数受理し、政務活動費などを活用して調査し、討論などを活発に行って「ジャッジ」に至れば、自ずと議会が活性化し、議会の役割を十分に果たすことができるのではないでしょうか。
議長に就任した現在、このようなことを随想し、群馬県において日々取り組んでいるところです。
群馬県議会議長
須藤 和臣(すとう かずおみ)
生年月日
昭和42年12月8日
主な経歴
- 平成19年4月
- 群馬県議会議員に初当選
現在4期目
産経土木常任委員会委員長、文教警察常任委員会委員長、総務企画常任委員会委員長及び群馬県監査委員を歴任 - 令和6年5月
- 第98代群馬県議会議長に就任