全国都道府県議会議長会

アフターコロナに向けた地域経済の早期回復に関する決議

令和3年7月14日 決定

 現在、感染力の強い新たな変異株が各地で確認され、感染の再拡大が懸念されることから、万全の措置を講じ、何とかして収束させなくてはならない。

 そのためには、引き続き国と地方が協力し、希望する全ての対象者へのワクチン接種を急がなくてはならない。

 また、地域経済の活力を早急に取り戻さなければ、飲食業、観光関連産業などあらゆる分野の事業者が受けたダメージや女性や非正規労働者の深刻化した雇用情勢の回復は期待できるものではない。このため、事業者や労働者への強力な支援のほか、縮小した経済の規模を拡大させるため、景気の下支えとなる公共投資など大胆な政策も必要である。

 さらに、感染症が収束し、各種対策の効果で経済情勢が回復しても、令和2年度末における実質無利子・無担保融資等の残高が約48.4兆円にのぼっており、返済が始まれば中小企業・小規模事業者が再び資金繰りに困窮し、倒産や貸し倒れの発生が予想され、デフレに陥る恐れもあることから、先を見据えた対応も重要である。

 このため、経済のX字回復を図る総合的な経済対策の実施など、機動的な財政運営を図る必要がある。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

1 変異株への対応を始めとする新型コロナウイルス感染症対策の充実

 (1)ワクチン接種については、市町村、医療機関、企業等が連携して計画的に実施することができるよう、必要な供給量を十分確保すること。

 (2)水際対策の強化を図るとともに、PCR検査体制の強化及び抗原検査を含めた検査体制の強化への支援を充実すること。

 特に、都道府県が独自に実施する民間検査機関を活用したモニタリングPCR検査については、行政検査として位置付け、全面的な財政措置を講ずること。

 (3)変異株による感染拡大の恐れがあることから、病床と宿泊療養施設の確保のため、医療従事者に対する処遇改善や感染症専門施設の設置支援など、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」の対象拡大や増額を行うこと。

 また、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」については、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域であるかに限らず、地方公共団体が必要とする額を引き続き確保すること。

 (4)危機に瀕した中小企業・小規模事業者の事業継続を図るため、予算・税制・金融措置等の支援を充実すること。

 また、コロナ禍の影響を踏まえた業態の転換、異業種との連携、収束後も見据えた新たな事業の創出などに対する支援を充実すること。

 (5)今般の感染症対応を十分検証し、その結果をもとに、危機事案に対応する根拠となる法令の整備や平時と緊急時で医療提供体制を迅速かつ柔軟に切り替える仕組みの構築など今後起こりうる新たな感染症への体制整備を進めること。

 (6)効果的な治療法・治療薬や国産ワクチンの開発・生産体制の強化を促進すること。

 また、ワクチン接種については、どの地域においても格差なく円滑に受けられるという視点から十分検証するとともに、今後新たな感染症が生じたときの効果的な接種のあり方を検討すること。

2 疲弊した地域経済のX字回復に向けた取組

 (1)景気の下支えとなる公共投資について必要な事業費を確保し、地域間の交流や観光の基盤となるインフラの整備、国民の安全・安心につながる防災・減災対策を積極的に実施すること。

 (2)経済活動の縮小により、甚大な影響を受けている飲食業、観光関連産業、小売業、卸売業、製造業、農林水産業等のあらゆる分野の事業者が事業を継続できるよう、事業者の負担軽減に着目した融資や返済猶予等の資金繰り対策を充実すること。

 (3)公共交通は、住民はもとより旅行者等が円滑に移動するために欠かせないものであることから、社会経済活動再開後、経営が安定するまでの間、事業者が減便や路線廃止を行うことなく、安定的に運行を維持することができるよう、必要な支援を講ずること。

 (4)国内旅行者の減少やインバウンドの消失により、中小規模の事業者をはじめ宿泊業、旅行会社、貸切バス等の観光関連産業が甚大な打撃を受けていることから、各地域の感染状況を踏まえ、一定程度収束した地域における観光需要の喚起策を強力に実施するなど、更に大胆な支援を講ずること。

 (5)雇用環境の改善に向け、職業訓練の強化、働きながら学べる環境の整備、リカレント教育の推進など人材育成や再就職に向けた総合的な支援を充実すること。

 以上、決議する。

  令和3年7月14日

全国都道府県議会議長会