全国都道府県議会議長会

2 少子化対策・子育て支援の推進について

令和3年7月14日 決定

 令和2年の出生数は840,832人で過去最少を更新した。

 また、令和2年の妊娠届の件数は前年比約4.8l減となっており、令和3年においても出生数が継続的に減少していくことが容易に想定できる。

 これは、未婚化・晩婚化の進行もあるが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、完全失業者が209万人となる深刻な経済・雇用情勢の悪化や、医療への不安が拡大するなど安心して子供を生み育てることができる環境が失われたことが原因といえる。

 今後、新型コロナウイルス感染症が収束しても、直ちに雇用情勢等が改善することは望めず、今後も出生数のさらなる減少が不可避となることが予想される。このことは、国の基本的枠組みである人口構成に更にゆがみを生じさせかねない喫緊の課題である。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、失業等により生活環境に大きな変化が生じた家庭も多く、児童虐待や子供の貧困の増加が懸念されている。

 こうした中、昨年5月、国は、新たな「少子化社会対策大綱」を閣議決定し、希望出生率1.8を実現することを目標に掲げ、昨年12月には、「全世代型社会保障改革の方針」を閣議決定し、不妊治療への保険適用の早急な実現、待機児童の解消に向けた新たな計画の策定などの少子化対策がトータルな形で示されたところである。また、政府・与党において「こども庁」創設の議論が進められているが、子供は国の宝であり、子供に対するあらゆる施策を充実し、これまで以上に国と地方が一丸となって、少子化の進行に歯止めをかけなければならない。

 安心して子供を生み育てることができる環境づくりは、子育てをしやすい地方への移住促進のため東京圏への一極集中の是正にもつながる施策でもあることから、全力を挙げる必要がある。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 地方が自らの創意工夫により、結婚支援の取組、子育て中の女性への就労支援等を安定的かつ継続的に実施することができるよう、当初予算での財政支援を充実すること。

(2) 不妊治療への令和4年度からの保険適用に当たっては、なおも保険適用外となる治療も含め、引き続き利用者の経済的負担の軽減を図ること。

(3) 認定こども園の整備等の「量的拡充」及び保育士の配置改善等の「質の向上」を推進する「子ども・子育て支援新制度」を着実に実施できるよう、1兆円超の安定財源を確保すること。

(4) 待機児童の解消を図るため、幼児教育・保育の無償化による保育ニーズの増大を踏まえ、引き続き、保育所等の施設整備費等に係る財政支援及び更なる処遇改善や研修の充実等による幅広い幼稚園教諭・保育士の確保・育成など必要な支援を充実すること。

 また、放課後児童クラブについては、施設整備の促進及び放課後児童支援員の確保に係る財政支援を充実すること。

(5) 中小企業における従業員の仕事と家庭の両立が図られるよう、一般事業主行動計画の策定及び企業主導型保育事業に係る財政支援を充実すること。

 また、新型コロナウイルス感染拡大防止のため普及が図られたテレワーク等を仕事と家庭の両立に活かす観点も含め、更なる普及が図られるよう、環境整備に係る支援を充実すること。

 なお、男性の育児休業取得を促進するため、周知・啓発や助成金による支援を充実すること。

(6)子育て世帯への経済的負担の軽減については、子供の医療費助成等に係る国民健康保険の国庫負担減額調整措置の廃止、国による子供の医療費助成制度の創設、多子世帯への負担軽減策の拡充などを図ること。

(7)新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会環境の変化により児童虐待や育児放棄の増加が懸念されるため、SNS等を活用した相談支援体制の強化を図るとともに、児童相談所の深刻な人材不足の解消に向けて児童福祉司等の人材確保や専門性向上に係る支援を充実すること。

 また、児童相談所において、必要な一時保護を躊躇なく行うとともに、子供たちが適切な環境のもと過ごすことができる体制を整えるため、一時保護所の増設や生活環境の改善について十分な支援措置を講ずること。

(8)貧困の世代間連鎖を断ち切るため、ひとり親家庭への支援策の拡充、放課後児童クラブの利用者負担の軽減、児童養護施設等の子供の自立支援策の拡充及び学習支援や教育相談体制の充実など子供の貧困対策の更なる強化を図ること。

 特に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、経済的に厳しい状況に置かれた子育て世帯には、十分な対策を講ずること。

(9) 養育費の不払いなど父母の離婚によって生じる諸課題を解消し、子どもが健全に成長できる環境を実現するために、父母の離婚後の子育てに関する諸施策を拡充すること。