新型コロナウイルス感染症の拡大は、我が国の社会経済活動に多大な影響を及ぼし、人々の生活や価値観が一変させられる事態となった。

　この教訓を踏まえ、今般の感染症対応の検証を十分行い、今後新たな感染症が発生した場合でも、社会経済活動の影響が最小限になるようにし、大きな被害が出ないようにする必要がある。

　なお、現在も感染力と重症化率が高い変異株による感染拡大の恐れがあることから、国内で患者数が再び増加に転じたときにも対応できるよう対策を講ずる必要がある。

　よって、次の措置を講ぜられたい。

　（1）さらなる病床と宿泊療養施設の確保のため、都道府県が医療機関に交付する入院患者受入協力金、医療従事者に対する処遇改善及び感染症専門施設の設置支援など、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の対象拡大や増額を行うこと。

　　　　また、相談・外来診療体制を適切に維持・整備するために必要な支援を充実すること。

　（2）水際対策の強化を図るとともに、PCR検査体制の強化及び抗原検査を含めた検査体制の強化への支援を充実すること。

　　　　特に、都道府県が独自に実施する民間検査機関を活用したモニタリングPCR検査については、行政検査として位置付け、全面的な財政措置を講ずること。

　（3）保健所が積極的疫学調査や入院勧告などの重要な機能を円滑に行うことができるようにするため、保健師の派遣や育成も含めた体制の強化を図ること。

　（4）変異株の子ども・若者への感染についての分析結果や具体的感染事例、効果的感染予防策等について、詳細に国民に情報提供を行い、必要に応じて対策を強化すること。

　　　　特に、若者のワクチン接種率向上を図るため、ワクチン接種の効果に関する正確な情報を分かりやすく伝え、若者に十分な理解が得られるようにすること。

　　　　なお、12歳未満の子どものワクチン接種についても検討すること。

　（5）感染拡大防止対策に取り組む介護施設、障害者施設及び児童福祉施設等に対する財政支援を拡充するとともに、職員に対する処遇改善を図ること。

　　　　また、国の責任において代替職員の確保及び防護具等の調達、供給を進めること。

　（6）感染症の影響により、受診・利用控えにより減収が生じている医療機関、薬局、健診機関、介護・福祉サービス、あん摩マッサージ・鍼灸・柔道整復等の事業所等への支援を行うこと。

　（7）感染拡大による影響を的確に把握し、雇用を守るため必要な措置を臨機応変に講ずること。

　（8）「ワクチン・検査パッケージ」の活用等に当たっては、効果等について国民の十分な理解を得るとともに、感染対策に「緩み」が生じないよう効果を検証し、必要な対策を講ずること。

　　　　また、PCR検査をより容易に受けられる体制を整備し、国民が積極的に活用できるようにすること。

　　　　なお、感染者やその家族、医療従事者、ワクチン未接種者等に対するいわれなき偏見や差別が生じることのないよう、人権や風評被害に配慮した対策を充実すること。

　（9） 生活福祉資金貸付制度については、貸付金償還免除の適格要件を住民税非課税世帯に限定せずさらに緩和するとともに、事態の長期化を踏まえ、据置期間や償還期限の延長を行うこと。

　（10）今般の感染症対応を十分検証し、その結果をもとに、危機事案に対応する根拠となる法令の整備や平時と緊急時で医療提供体制を迅速かつ柔軟に切り替える仕組みの構築など今後起こりうる新たな感染症への体制整備を進めること。

　（11）効果的な治療法・治療薬や国産ワクチンの開発・生産体制の強化を促進すること。

　　　　また、ワクチンについては接種が進んでいるところであるが、どの地域においても格差なく円滑に受けられるという視点から今回のワクチン接種を検証するとともに、今後新たな感染症が生じたときの効果的な接種のあり方を検討すること。

　（12）感染防止と経済活動の両立を図るため、従来の雇用関係によらない多様な働き方の導入やテレワークの更なる普及・定着などを推進するため、様々な環境整備を図ること。