全国都道府県議会議長会

4 地域医療提供体制の強化について

令和3年10月28日 決定

 我が国の医療を取り巻く環境は、少子高齢化の進行、国民の医療に対するニーズの多様化など著しく変化しており、これに対応した良質で国民が安心して暮らせる医療提供体制の確保が強く求められている。

 特に、地方の医師不足や地域別・診療科別の医師偏在を早期に解消し、救急医療や周産期医療を確保することなどに加えて、今回の新型コロナウイルス感染症などにも十分対応できることが重要であることから、地域における医療提供体制を強化することは喫緊の課題となっている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

 (1) 臨時的な医学部定員増の措置については、地方における深刻な医師不足が解消されるまで継続すること。

    また、各都道府県の「医師確保計画」の実効性を高めるため支援策の充実を図ること。

 (2) 地域別、診療科別の医師の偏在を解消するため、医師不足地域への医師の派遣など実効性ある対策を講ずるとともに、産科・小児科等特定診療科の診療報酬の適切な見直しによる処遇の改善や就労環境の改善等についても引き続き推進すること。

    また、地域の実情を十分に踏まえた実効性のある対策を講ずるため、今後起こりうる感染症の流行を見据え、引き続き、「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」などで十分に協議を行い、地方の意見を施策に反映すること。

 (3) 医師不足の深刻な地域の中小規模病院において、総合診療医を育成・定着する仕組みを構築すること。

    また、新たな専門医制度の運用に当たっては、更なる地域偏在、診療科偏在を招くことがないよう専門研修プログラムの定員設定等に際して、地方の意見を十分反映すること。

 (4) 地域医療を支える看護師、助産師等の看護職員の不足が深刻化していることから、潜在看護職員の再就業支援等の取組への支援を充実すること。

 (5)ICTを活用した遠隔診療は、医療資源の少ない離島や中山間地域など条件不利地域のみならず、専門医不足の解消や感染症のまん延防止等にも有効な手段であることから、普及に向けたガイドラインの見直しや診療報酬の改定など、必要な対策を講ずること。

 (6) 認知症施策を総合的かつ計画的に推進する「認知症基本法」(仮称)の早期制定を図ること。

    また、認知症サポーター等による支援体制の構築、認知症の有効な予防法や行動・心理症状に対する適切な対応、次世代認知症治療薬の開発・早期実用化や早期診断法の研究開発への支援、加齢性難聴者の補聴器購入への支援などを推進すること。

 (7) 難聴児の早期発見、早期治療・療育を行うため、スクリーニング検査の実施率の向上、医療や補聴機等の進歩に対応した効果的な療育プログラムの確立を図るとともに、乳幼児の聴力検査や難聴児の療育に携わる専門的人材の確保及び資質向上への支援を行うこと。

    また、聴覚から言語中枢に至る学際的研究を行うとともに、医療や福祉等の他分野の知見を取り入れた聴覚障害教育に関する研究を充実すること。

 (8) 健康長寿社会の実現のため、健康寿命の延伸に向けた取組などを積極的に推進するとともに、保健指導等を行う保健医療専門職の確保及び資質向上の取組への支援を行うこと。

    また、医療や介護、健康診査等のデータの集積・解析による予防医療や病気の早期発見等が期待されることから、地方が医療等データを有効活用し、施策の企画立案に生かせるよう、利活用方法を提示するとともに、人材育成等に係る支援を行うこと。

 (9) がん検診の受診率向上を図るため、市町村が実施するがん検診事業に対して十分な財政支援を講ずること。併せて、地方が独自に実施するがん発症リスクの低減を図るための検査についても必要な財政支援を講ずること。

 (10) 生活習慣病の予防に資するため、特定健康診査の対象項目に歯科の項目を追加すること。

 (11) 近年、自然災害が激甚化し、甚大な被害が発生していることから、被災した医療施設の早期復旧を図るため、十分な人的・財政支援を行うこと。

 (12) 人と動物共通の新たな感染症への対応力の強化のため、全ての動物の感染症等の調査研究、医薬品開発、水際防疫等を統合して実施する体制を確立すること。

 (13) 国保総合システムの次期更改に当たっては、財政基盤が脆弱な市町村等保険者に新たな財政負担が生じないよう、十分な支援を講じること。