全国都道府県議会議長会

4 脱炭素社会の実現及びエネルギーの安定供給確保について

令和3年10月28日 決定

 政府は2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比マイナス46lとすることを新たな目標とし、再生可能エネルギーの主力電源化の徹底等を進めることとしているが、脱炭素社会への円滑な移行のためには国民負担の抑制等多くの課題がある。

 また、東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所事故により、原子力の安全性について国民の信頼が大きく損なわれ、また、電力、石油、ガス等といったエネルギーの供給にも混乱が生じ、我が国のエネルギーシステムが抱える脆弱性が明らかになるとともに、近年の大規模自然災害による大規模停電によって、住民生活や地域経済に甚大な影響が生じたことから、エネルギーシステムの強化が課題となっている。

 よって、脱炭素社会への円滑な移行を進めるとともに、エネルギーの安定供給確保を図るため、次の措置を講ぜられたい。

 (1)  脱炭素社会の実現に向けて、温室効果ガス46l削減等の目標が確実に達成できるよう、具体的な道筋を明示すること。

    また、産業構造やエネルギーの消費・生成の状況は地域ごとに異なることから、地域の実情に応じて、地方公共団体や企業が脱炭素化に取り組めるよう、技術的・財政的支援を充実すること。

 (2)  国民生活・産業経済を維持するためのエネルギー安定供給、地球温暖化防止のための低炭素社会の実現、災害による大規模停電の防止などの観点から、再生可能エネルギーの最大限の導入拡大に向け、送配電網の強化などの具体的方策を講ずること。

    なお、現在、国が進めている電力システム改革については、事業者の電力小売業への参入や送配電網の整備状況、電力の安定供給に必要な石炭火力発電の低炭素化への取組など地域の実情を踏まえ、どの地域にあっても、改革のメリットが等しく享受できるようにすること。

 (3)  災害リスクに備えた強靱な国土形成を進めるため、エネルギーに係る多様なインフラ整備や広域的な燃料供給体制構築に向けた取組について、国として主導的な役割を果たし、積極的に実施すること。

 (4)  固定価格買取制度及び本制度から移行する市場連動型新制度の適切な運用を行い、引き続き再生可能エネルギーの導入拡大を最大限加速させること。

 (5)  中小企業が徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの導入を実践できるよう、省エネ設備や自家発電設備の導入などに関する支援を充実すること。

 (6)  住宅・建築物の省エネ化や省エネ家電のより一層の普及支援等省エネ対策の強化を図ること。

    また、非常用電源の確保の観点から、家庭用蓄電池やガスコージェネレーションシステム導入者に対する国の助成策を大幅に拡充すること。

 (7)  電気自動車(EV)・燃料電池自動車(FCV)の普及や充電インフラ・水素供給インフラの整備を促進するための支援を充実すること。

 (8)  洋上風力発電の導入拡大を図るため、送電網の整備や人材育成に対する支援を充実すること。

    また、洋上風力発電に関する住民の理解が深まるよう、広報の充実を図ること。

 (9)  家庭・業務部門での脱炭素化を推進するため、住宅・建築物への太陽光発電設備の導入に対する支援を充実すること。

 (10)  太陽光発電施設について、防災や環境保全等の観点から適正に設置されるよう、立地の規制に係る法整備等の所要の措置を行うとともに、災害時の斜面崩落誘発の防止など安全性を確保するため、設計や施工管理に係る基準を整備すること。

    また、発電事業終了時や事業者が経営破綻した場合に、パネル等の撤去及び処分が適切かつ確実に行われる仕組みを整備すること。

 (11)  木質バイオマス等の利用を拡大するため、原料収集の低コスト・効率化やエネルギー利用効率向上のための技術革新を強力に促進するとともに、低質材など木質バイオマス燃料の供給とエネルギー利用に対する支援を充実すること。

 (12)  将来の二次エネルギーの中心的役割を担うものの1つとして期待されている水素エネルギーの利活用拡大に向けて、水素ステーション整備や革新的燃料電池技術等の開発支援を推進し、水素社会の実現を図ること。

 (13)  原子力発電所の新規制基準への適合性審査については、厳格な審査を行うこと。

    また、原子力発電所の安全性に関する国内外の最新の知見を絶えず収集・分析し、適切に基準に反映させるなど、原子力規制の充実強化に取り組むこと。

    さらに、原子力安全規制の取組状況や安全性の確認結果について、広く国民への説明責任を果たすとともに、原子力の安全確保等に関する情報公開、関係地方公共団体や住民への説明、広報の充実強化を図り、理解促進に努めること。

 (14)  安全性が確認された原子力発電所の再稼働については、国としてエネルギー政策上の必要性を明確に示し、地元の意向を尊重しながら責任を持って判断し、その結果について国民に丁寧かつ十分な説明を行い、理解を得ること。

 (15)  原子力災害対策指針については、最新の知見や関係地方公共団体等の意見を踏まえ、必要な項目を早急に整備するとともに、住民の安全確保の視点に立った改定を継続的に行うこと。

    また、地方公共団体が行う地域防災計画(原子力災害対策編)の改定や福島での事故を踏まえた防災対策の強化に対して、引き続き必要な調整、支援及び協力を行うこと。

 (16)  廃炉が決定した原子力発電所の廃棄物については、国の責任において処分方法の議論を進めること。