全国都道府県議会議長会

東京電力福島第一原子力発電所事故対策に関する決議

令和4年7月27日 決定

 東京電力福島第一原子力発電所事故は、11年が経過した現在も収束しておらず、多くの避難者、健康被害への不安、根強い風評など、広範囲に深刻な影響を及ぼし続けており、原子力政策を国策として推進してきた国は、福島の復興・再生を加速させるべきである。

 特に、令和3 年4 月のA L P S 処理水( 以下「処理水」という。)の処分に関する基本方針の決定については、国内外の理解が十分

に得られているとは言えず、新たな風評発生を懸念する意見等が示されており、これまで積み重ねてきた県民の努力が水泡に帰す懸念がある。

 国においては、処理水の問題は、福島県だけではなく、日本全体の問題であるとの認識の下、責任を持って対応する必要がある。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

1 原発事故への対応

 国が前面に立ち、当該原子力発電所の廃炉に向けた取組を安全・着実に進めるとともに、東京電力への国の指導・監督を一層強化すること。

2 放射性物質の低減対策

(1) 「放射性物質汚染対処特措法」に基づき、除去土壌等の確実な搬出及び原状回復、除染後のフォローアップなど、必要な除染等の措置を安全かつ着実に実施すること。

 また、特定復興再生拠点区域の除染を確実に実施するとともに、同区域外についても、住民の早期帰還が実現するよう、帰還困難区域全ての避難指示解除に向け、除染等について最後まで責任を持って取り組むこと。

(2) 安全な農林水産物を継続的に生産できるよう総合的な対策を講ずるとともに、森林やため池等の放射性物質の低減を図るため十分な予算を確保すること。

(3) 国の責任において指定廃棄物の処分施設を確保し、確実に管理・処分を行うこと。

3 処理水対策

(1) 処理水の取扱いについては、昨年12月に策定された行動計画に基づき、政府一丸となって、新たな風評が生じないよう、責任を持って取り組むこと。

(2) 処理水の処分に関する基本方針等について、水産業をはじめとする関係団体や自治体等に対する丁寧な説明と真摯な対話を継続して行い、理解を得ること。

(3) タンクに保管されている水の浄化処理について、処理過程の透明性を確保した上で確実に実施するとともに、地元関係者等の立ち会いによる環境モニタリングの実施など、客観性、透明性、信頼性の高い安全対策を講ずること。併せて、処理水の元となる汚染水の発生量を、これまで以上に抑制する対策を講ずること。

(4) 処理水に含まれる放射性物質に関する科学的な性質や、国内外におけるトリチウムの処分状況、環境モニタリングの結果など、正確な情報を広く国内外に発信すること。

(5) 新たな風評を発生させないという強い決意の下、万全な風評対策を講ずるとともに、漁業者をはじめとする事業者が安心して事業を継続・拡大できる環境整備に取り組むこと。また、そうした対策を講じても風評被害が発生する場合には、東京電力に対し一律に賠償期間や地域、業種などを限定することなく迅速かつ確実な賠償を行うよう指導するなど、国が最後まで責任を持って対応すること。

(6) トリチウムの分離に関する新たな技術動向の調査や研究開発を推進し、実用化できる処理技術が確認された場合には、柔軟に対応すること。

4 風評の払拭等

(1) 風評の払拭・風化の防止対策は、福島県及び東北被災地域の復興と創生を左右する極めて重要な課題であるとの認識の下、引き続き、積極的に取り組むこと。

(2) 国民が放射線と健康・食に関する正確な知識を身につけることができるよう、放射性物質について、科学的根拠に基づく正確な情報を分かりやすく発信するとともに、積極的な広報・教育活動を行うこと。

 また、各自治体等が実施する取組に対する支援を充実すること。

5 原子力災害に伴う損害賠償等

 営業損害や風評被害を含む原子力災害に関する全ての損害について、消滅時効を援用せず、かつ、完全な賠償が果たされるよう東京電力に対し強く指導するとともに、被害者に対して責任を持って迅速かつ十分な支援を行うこと。

6 原子力発電所事故被災地域の復興

(1) 「福島復興再生特別措置法」に基づき、国が責任を持って総合的な施策を推進するとともに、必要な予算を十分かつ確実に確保すること。

(2) 特定復興再生拠点区域復興再生計画について、その内容を実現し、計画期間内の避難指示解除が確実にできるよう責任を持って取り組むこと。

 また、特定復興再生拠点区域外については、帰還意向のない住民の土地や家屋等の扱い、住民の意向確認、除染の手法・範囲の具体化などが明確になっていないため、引き続き、地元自治体と真摯に協議を重ね、将来的に帰還困難区域全ての避難指示を解除すること。

(3) 福島イノベーション・コースト構想に関する各取組について、構想実現のために必要な体制や財源などを十分に確保しながら、政府全体で一層の連携強化の下、福島県と密接に連携し、構想の具体化を推進すること。

 加えて、「福島国際研究教育機構」は、同構想における司令塔の役割が期待されることから、機構が世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」となるよう、研究開発やその産業化、人材育成など、機能の更なる具体化を進めること。

 以上、決議する。

  令和4年7月27日

                                       全国都道府県議会議長会