全国都道府県議会議長会

1 少子化対策・子育て支援の推進について

令和4年7月27日 決定

 令和3年の出生数は811,604人で過去最少を更新した。

 これは、未婚化・晩婚化の進行に加えて、コロナ禍で経済・雇用情勢が悪化したことにより安心して子供を生み育てることができない状況が原因といえる。

 今後、直ちに雇用情勢等が改善することは望めず、出生数のさらなる減少や失業等による家庭環境の変化から児童虐待や子供の貧困の増加も懸念される。

 子供は国の宝であり、安心して子供を生み育てることができる環境づくりは、我が国の少子化の進行に歯止めをかけるだけでなく、子育てをしやすい地方への移住促進も期待でき、東京圏への一極集中の是正にもつながることから、国と地方が一丸となり全力を挙げ取り組む必要がある。

よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 地方が自らの創意工夫により、結婚支援の取組、子育て中の女性への就労支援等を安定的かつ継続的に実施することができるよう、財政支援を充実すること。

(2) 不妊治療については令和4年度から保険適用が開始されたところであるが、なおも保険適用外となる治療も含め、引き続き利用者の経済的負担の軽減を図ること。

(3) 出産育児一時金については、出産に係る費用が増加しており、支給額では賄えない地域も存在することから、負担軽減のため増額を図ること。

(4) 認定こども園の整備等の「量的拡充」及び保育士の配置改善等の「質の向上」を推進する「子ども・子育て支援新制度」を着実に実施できるよう、社会保障・税一体改革で制度創設時に消費税率引上げなどにより財源を確保することとした経緯を踏まえ1兆円超の安定財源を確保すること。

(5) 幼稚園教諭・保育士の確保のための処遇改善や育成のための研修及び保育所等の施設整備費への財政支援を充実するとともに、放課後児童クラブの施設整備及び放課後児童支援員確保への財政支援を充実し、待機児童の解消を図ること。

 また、障害児保育を含む保育士の配置基準を見直し保育士の負担軽減を図るとともに、過疎地域の保育所の運営を支援すること。

(6) 中小企業における従業員の仕事と家庭の両立が図られるよう、一般事業主行動計画の策定及び企業主導型保育事業に係る財政支援を充実すること。

 また、コロナ禍で普及が図られたテレワーク等については、仕事と家庭の両立に活かす観点も含め、更なる普及が図られるよう、環境整備に係る支援を充実すること。

(7) 子育て世帯への経済的負担の軽減については、子供の医療費助成等に係る国民健康保険の国庫負担減額調整措置の廃止、多子世帯への負担軽減策の拡充などを図ること。

(8) 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会環境の変化により児童虐待や育児放棄が増加したことから、SNS等を活用した相談支援体制の強化を図るとともに、児童相談所の深刻な人材不足の解消に向けて児童福祉司等の人材確保や専門性向上に係る支援を充実すること。

 また、要保護児童を家庭に迎え入れる里親、ファミリーホームの制度が活用されるよう取り組むこと。

(9) 貧困の世代間連鎖を断ち切るため、ひとり親家庭への経済的支援策の拡充、放課後児童クラブの利用者負担の軽減、児童養護施設等の子供の自立支援策の拡充及び学習支援や教育相談体制の充実など子供の貧困対策の更なる強化を図ること。

 特に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、経済的に厳しい状況に置かれた子育て世帯には、十分な対策を講ずること。

(10) 養育費の不払いなど父母の離婚によって生じる諸課題を解消し、子供が健全に成長できる環境を実現するために、父母の離婚後の子育てに関する諸施策を拡充すること。