全国都道府県議会議長会

2 観光の再開・拡大に向けた取組について

令和4年7月27日 決定

 世界各地における新型コロナウイルスの感染拡大により、国内における旅行者、我が国を訪れる外国人旅行者が急激かつ大幅に減少し、観光関連産業は壊滅的な打撃を受けた。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、国内旅行においては、密を避けた個人旅行やアウトドア活動の需要が増加するなど、旅行形態が変化する一方、我が国では6月から約2年ぶりとなる外国人旅行者の受入れを再開し、今後、観光消費や本格的なインバウンドの拡大が期待されるところである。

 引き続き、感染状況や観光需要の動向を十分踏まえ、新型コロナウイルス感染防止対策を適切に講じた上で、国内外の観光需要の喚起を行い、コロナ禍で疲弊した観光産業について、確実に回復させていく必要がある。

また、近年、地震や台風、集中豪雨など、全国各地で深刻な災害が相次いでおり、被災地域の観光産業の復興に向けた支援も必要である。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 国内旅行においては、感染状況に十分留意しながら、観光需要の円滑な回復に向け、段階的な施策の拡大を図ること。

 また、コロナ禍を契機として、個人旅行やアウトドア活動、マイクロツーリズムの需要が増加していることから、新たなニーズに対応した観光需要の喚起を図る施策を充実すること。

 その際には、地方の中小の宿泊施設、旅行業者等も十分に利用されるよう配慮し、旅行者が特定の地域へ過度に集中することなく、経済効果が全国に幅広く波及するようにするとともに、平日や閑散期における観光についても促進を図ること。

 併せて、正確な情報を迅速かつ継続的に国内外に発信し、観光客の不安解消、風評被害の防止を図ること。

 なお、GoToトラベル事業については再開時期を慎重に見極めるとともに、再開に当たっては、全国各地で観光消費の増大を図り、特に地方における地域活性化に大きな効果を与えられるよう強力に実施すること。

(2) 新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだインバウンドを回復、拡大させるため、各国のワクチン接種や感染収束の状況を十分見極め、誘客が可能となった国に対する新たな訪日客層を開拓する取組、地方における官民連携した誘客の取組への支援を充実すること。

また、外国人旅行者の観光消費を促すよう、宿泊施設や観光施設の改修など、観光地の面的再生・高付加価値化に向けた取組に対して継続的な支援を充実すること。

 なお、外国人旅行者の観光ツアーを実施する場合には、感染対策について旅行業者が負担なく役割を果たせるように支援を講ずること。

(3) 新型コロナウイルス感染症により打撃を受けた観光会社、宿泊業など観光関連産業に対して、事業継続のための資金繰りや雇用確保、感染防止の取組に係る支援を引き続き講ずること。

(4) 多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなど(MICE)の誘致、新型コロナウイルスの感染防止対策を講じた上での開催に対する支援を充実すること。

(5) 魅力ある観光地の形成促進のため、伝統、文化、景観など地域資源の活用・保全等に対する支援を充実すること。

また、観光地域づくりの舵取り役を担う法人(日本版DMO)や広域観光周遊ルートの形成に対する支援を充実すること。

(6) 査証(ビザ)要件の更なる緩和を図るとともに、地方空港及び港湾における税関・出入国管理・検疫(CIQ)の体制を整備・拡充すること。

 特に、世界各国における新型コロナウイルスを始めとした感染症の発生状況を踏まえ、検疫所の人員増強など検疫体制の抜本的な強化を図り、水際対策を徹底して実施すること。

(7) 無料Wi-Fi環境の整備、多言語による情報提供の充実、キャッシュレス決済の環境整備、客室等のバリアフリー化、観光地までの交通手段の充実、災害時における迅速な情報提供など、訪日外国人が旅行しやすい環境の整備を更に推進すること。

(8) 令和2年7月豪雨、昨年2月と本年3月の福島県沖を震源とする地震等の被災地域における観光施設の早期復旧に向けた重点的な支援を講ずるとともに、風評被害を防止するため、地域の現状に関する正確な情報発信や、観光プロモーションなど誘客のための取組に対して十分な支援を講ずること。

(9) 国際観光旅客税については、これまでも地方公共団体が観光資源の魅力向上等に対し、様々な取組を行っていること等を踏まえ、その税収の一定割合を、自由度が高く創意工夫を活かせる交付金等により地方に配分すること。