全国都道府県議会議長会

4 デジタル社会の実現に向けた取組の推進について

令和4年10月25日 決定

 デジタル社会の実現は、我が国の国際競争力の強化及び国民の利便性の向上に資するとともに、急速な少子高齢化の進行や東京圏一極集中の是正など我が国が直面する課題を解決する上で極めて重要である。

 このためデジタル庁が中心となり、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」の形成が期待されるところである。

 デジタル社会の実現には、国民の理解を得ながら、国、地方公共団体、民間事業者が一丸となって取り組み、地方のデジタル化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)のための情報通信基盤整備などを推進する必要がある。

 また、新型コロナウイルス感染症拡大という危機を契機に地方議会のデジタル化推進の必要性は高まっている。地方議会のデジタル化については、行政の高度化に対応しつつ、障害の有無等にかかわらず議員が多様な議員活動を積極的に進め、平時・災害時・コロナ禍においても議会機能を十分に発揮できるようにしていく必要がある。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) デジタル田園都市国家構想の実現に当たっては、過疎地でも5G(第5世代移動通信システム)等のデジタルインフラの整備が必要であり、デジタル人材は東京圏に6割が集中していることから、デジタル格差が生じないよう地方における環境整備を推進すること。

(2) 地方公共団体の情報システムの標準化など地方の負担を伴う取組の実施に当たっては、地方の事務処理の実態を踏まえた上で、標準化されたシステムへの円滑な移行等が可能となるよう、十分な人的・技術的支援、財政支援を講ずること。

(3) 情報通信技術に関する専門的な知識・技術を有するデジタル人材について、2026年度までに230万人育成する目標の達成に向けて、地方公共団体、民間等における確保・育成の取組に対する支援を講ずること。

(4) 法令等により書面、押印、対面が義務付けられている行政手続について、早期にオンライン化を実施すること。

(5) マイナンバーカードがデジタル社会の基盤となるツールとして全国民に行き渡るよう、更なる機能の拡充と併せて、普及啓発を進めるともに、交付体制の強化に向けた支援を図ること。

 なお、今後、医療機関等においてマイナンバーカードによる顔認証付きカードリーダーでの本人確認が進むことから、マイナンバーカードの健康保険証としての利用についても普及啓発を図ること。

(6) 国民誰もが行政手続や各種サービス等に円滑にアクセスすることができるよう、年齢、障害の有無、居住地域等による利用機会の格差等のデジタルデバイドを解消すること。

(7) 複雑・巧妙化するサイバー攻撃から個人情報や機密情報を守り、詐欺やなりすまし等によるサイバー犯罪を防止するため、サイバーセキュリティ対策に万全を期すこと。

(8) 教育、医療、農林水産業の分野やモビリティの高度化等におけるデジタル化の推進に当たっては、安全性を確保した上で規制緩和や制度の見直しを行い、国民の利便性向上を図ること。

(9) 5Gについては、2030年度までに全国・各都道府県ともに人口カバー率99lなどの目標達成に向けて、大都市部と地方部の基盤整備を一気に進め、地方を含むエリアで早期にサービスが開始されるよう、地方部における国庫補助事業を充実すること。

 また、事業者自らが、地域間で格差なく基盤整備を進められるよう、支援を充実すること。

 なお、地方公共団体に負担が生じる場合には財政支援を充実すること。

(10) 過疎地域や離島等の条件不利地域はもとより、全ての地域で情報通信技術がもたらす利便性を享受できるよう、光ファイバ等の整備を促進するため、継続的な財政支援を講ずること。

(11) 地方公共団体が整備した光ファイバ等情報通信基盤の安定的な運用を確保するため、維持管理・更新・災害復旧等に対する財政支援を充実すること。

(12) インターネット上の誹謗中傷行為は、人権上、極めて悪質な情報も存在し、深刻な社会問題となっていることから、防止のための広報啓発活動及び被害者への相談体制の強化を図ること。

 また、誹謗中傷行為に対し事業者がより自主的に取り組めるよう関係機関の連携強化を図ること。