全国都道府県議会議長会

1 食料の安定供給確保について

令和4年10月25日 決定

 ロシアのウクライナ侵略による小麦や肥料等の輸出停滞及び北米やカナダ産の小麦の不作は、世界の食料需給に大きな影響を及ぼし、食料の安定供給をめぐるリスクが顕在化した。

 特に、我が国は食料の多くを海外からの輸入に依存しており、食料自給率が主要先進国の中で最低水準にあるため、食料の安定供給が喫緊の課題となっている。

 ウクライナ情勢等の先行きは不透明であり、今後も世界の食料需給への影響が懸念されることから、我が国の食料安全保障を確立する観点からも、平素より食料自給率を向上させていくことが重要であり、今こそ主食である米が100l自給可能であることに改めて着目し、米の国内消費拡大や米及び米加工品の輸出拡大などの施策を強力に推進する必要がある。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 主食用米の消費拡大を図るため、ごはん食の美味しさや健康効果の情報発信を強化するとともに、中食・外食事業者への米の販売促進の支援を行うなど、消費を呼びかける強力なキャンペーンを実施すること。

 また、食育の一環としてごはん食を推進するため、米飯給食の回数拡大のための和食給食の献立開発の支援等を行うとともに、子供食堂等に対する政府備蓄米の無償交付の支援を拡大すること。

 さらに、消費者の米への多様なニーズに対応するため、健康志向に着目した品種や料理の特性に応じた品種の開発及び新たな米製品の開発・販売に対する支援を充実すること。

(2) 米粉の普及を図るため、米粉を使用したパン・麺等の食感や栄養成分等の特性に関する広報を強化するとともに、学校給食における米粉パン等の導入を推進すること。

 また、米粉の加工品の流通拡大を図るため、粒子が細かく米粉に適した良質な米粉用米の品種開発、新たな製造施設整備等による加工コストの低減及びグルテンフリーの需要に対応した米粉製品の生産などに取り組む事業者への支援を充実すること。

(3) 生産者や集荷業者・団体が主体的に需要に応じた作付け判断ができるよう、米の需給に関する情報提供を行う等、引き続き国が米の需給及び価格の安定に対する役割を果たすこと。特に、米及びパックご飯や米粉製品等の米加工品の輸出拡大や備蓄米の買入数量拡大などの販売促進対策等の支援を充実すること。

 また、ミニマムアクセス米の販売に当たっては、加工用米の需給に影響を与えないよう、対策を講ずること。

 さらに、米の現物市場の創設に当たっては、需給実態を的確に反映した価格指標を示すことができるようにすること。

(4) 小麦の生産拡大及び品質の安定化を図るため、作付の団地化及び生産性向上に資する技術・機械や優れた加工適性を持つ品種の導入などへの支援を充実すること。

 また、食品事業者が原材料を輸入小麦から国産小麦へ切り替える際の製造ラインの変更・増設などへの支援を充実すること。

(5) 食料品の価格高騰への対応策については、輸入小麦の政府売渡価格の据え置き、肥料価格上昇分を補填する支援金及び配合飼料価格の抑制対策などが実施されているが、今後も高騰が続くものと懸念されることら、引き続き万全の対策を講ずること。

(6) 本年6月のWTO閣僚会合において合意した「食料安全保障宣言」により、各国がWTOルールに則さない輸出規制をしないこととされたところであるが、引き続き経済連携交渉、WTO農業交渉等の国際貿易交渉に当たっては、食料の安定供給、食料自給率の維持及び農林水産物の国内生産量等に配慮し、農林水産業に影響を及ぼすことのないよう臨むこと。

(7) 食品の売れ残りや食べ残しによる食品ロスを削減するため、飲食店での食べきり・持ち帰りや、棚の手前にある商品を選ぶ「てまえどり」等が促進されるよう、消費者の意識向上を図るための啓発を強化すること。

 また、加工食品等の食品ロスを削減するため、売れ残りの懸念から製造日から賞味期限までの期間が3分の1を過ぎた製品は納品しない商慣習を事業者が見直していけるよう、消費者に対し賞味期限への理解を深める啓発を行うこと。

 さらに、フードバンク活動を行う団体が子供食堂等に食品の提供をしやすくするため、広域的な連携による食品の受入・提供の拡大などの取組に対する支援を充実すること。