全国都道府県議会議長会

東京電力福島第一原子力発電所事故対策に関する決議

令和5年7月18日 決定

 東京電力福島第一原子力発電所事故は、12年が経過した現在も収束しておらず、多くの避難者、健康被害への不安、根強い風評など、広範囲に深刻な影響を及ぼし続けており、原子力政策を国策として推進してきた国は、福島の復興・再生を加速させるべきである。

 特に、ALPS処理水(以下「処理水」という。)の処分については、いまだ新たな風評被害等を懸念する意見が示されており、国においては、処理水の問題は、福島県だけではなく日本全体の問題であるとの認識の下、最後まで責任を持って対応する必要がある。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

1 原発事故への対応

 国が前面に立ち、当該原子力発電所の廃炉に向けた取組を安全かつ着実に進めるとともに、東京電力に対する指導・監督を徹底すること。

2 放射性物質の低減対策

(1)「放射性物質汚染対処特措法」に基づき、除去土壌等の確実な搬出及び原状回復、除染後のフォローアップなど、必要な除染等の措置を安全かつ着実に実施すること。

(2)帰還困難区域等において実施する災害復旧事業等(河川、海岸)及び復興事業(道路、河川)においては、高線量のため再利用ができない土壌の発生により事業の実施が妨げられることのないよう、事前の除染や処分先の確保など、国が主体的に責任を持って必要な措置を講ずること。

(3)国の責任において指定廃棄物の処分施設を確保し、確実に管理・処分を行うこと。

(4)安全な農林水産物を継続的に生産できるよう総合的な対策を講ずるとともに、森林やため池等の放射性物質の低減を図るため十分な予算を確保すること。

3 処理水対策及び風評の払拭

(1)処理水の取扱いについては、本年1月に改定された行動計画に基づき、政府一丸となって、新たな風評被害が生じることのないよう、責任を持って対策に取り組むこと。

(2)処理水の処分に関する基本方針等について、水産業をはじめとする関係団体や自治体等に対する丁寧な説明と真摯な対話を継続して行うこと。

(3)タンクに保管されている水の浄化処理について、処理過程の透明性を確保した上で確実に実施するとともに、地元関係者等の立ち会いによる環境モニタリングの実施など、客観性、透明性、信頼性の高い安全対策を講ずること。併せて、処理水の元となる汚染水の発生量を、これまで以上に抑制する対策を講ずること。

(4)IAEA等の国際機関と連携し、第三者による監視を行うなど、透明性の確保に努めるとともに、処理水に含まれる放射性物質に関する科学的な性質や国内外におけるトリチウムの処分状況、環境モニタリングの結果など、科学的な事実に基づく情報を広く国内外に積極的かつ分かりやすく発信すること。

(5)新たな風評を発生させないという強い決意の下、万全な風評対策を講ずるとともに、漁業者等が安心して事業を継続・拡大できる環境整備に取り組むこと。

 また、そうした対策を講じても風評被害が発生する場合の賠償については、昨年12月に東京電力が賠償基準を公表したところであるが、被害の推認方法や賠償額の算定方法などの具体化に取り組むよう東京電力を指導するなど、国が最後まで責任を持って対応すること。

(6)農林水産物等の輸入規制を実施している国・地域に対し、規制措置の撤廃を強く働きかけること。

(7)トリチウムの分離に関する新たな技術動向の調査や研究開発を推進し、実用化できる処理技術が確認された場合には、柔軟に対応すること。

4 原子力発電所事故被災地域の復興

(1)「福島復興再生特別措置法」に基づき、国が責任を持って総合的な施策を推進するとともに、第2期復興・創生期間後も安心感を持って復興を進めることができるよう、必要な予算を十分かつ確実に確保すること。

(2)福島復興再生特別措置法の改正により創設された特定帰還居住区域について、避難が長期化したことによる住民の個別の事情や地元自治体の意向を十分にくみ取った上、早期の避難指示解除に向け、除染等に必要な予算を十分確保し、帰還意向のある全ての住民が一日も早く帰還できるよう最後まで責任を持って取り組むこと。

 また、特定復興再生拠点区域外については、帰還意向のない住民の土地や家屋等の扱い、除染の手法・範囲が明確になっていないため、引き続き、地元自治体と真摯に協議を重ね、将来的に帰還困難区域全ての避難指示を解除すること。

(3)福島イノベーション・コースト構想に関する各取組について、必要な体制や財源などを十分に確保しながら、政府全体で一層の連携強化の下、福島県と密接に連携し、構想の具体化を推進すること。

(4)福島国際研究教育機構(F−REI)の取組は、復興に取り組む地域全体にとって「創造的復興の中核拠点」として実感され、福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるものでなければならない。

 そのため、F−REIで取り組む5分野での研究開発を基本に、国内外に誇ることのできる世界最先端の研究開発を推進すること。

 また、その成果を社会実装につなげ、産業集積に向けた取組を推進するとともに、地域の未来を担う若者世代、企業の専門人材等を対象とした人材育成を進めること。

 さらに、県内外の様々な主体との連携により、F−REIの設置効果が地域の復興・再生に広域的に波及する取組を進めること。

 以上、決議する。

  令和5年7月18日

                                        全国都道府県議会議長会