全国都道府県議会議長会

5 デジタル社会の実現に向けた取組の推進について

令和5年7月18日 決定

 デジタル社会の実現は、我が国の国際競争力の強化及び国民の利便性の向上に資するとともに、急速な少子高齢化の進行や東京圏一極集中の是正など我が国が直面する課題を解決する上で極めて重要である。

 このため、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」の形成が期待されるところである。

 デジタル社会の実現には、国民の理解を得ながら、国、地方公共団体、民間事業者が一丸となって取り組み、地方のデジタル化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)のための情報通信基盤整備やデジタル人材の育成などを推進する必要がある。

 また、デジタル社会の基盤となるツールであるマイナンバーカードについては、国民の不安を招く事案が生じていることから、信頼の回復に向けた対応が急務になっている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) マイナンバーカードは、誤った情報の紐づけ、家族名義での公金受取口座の登録等の問題が生じたことから、データの再点検等を早期に完了させるとともに、再発防止のための万全な対策を講ずること。

(2) デジタル田園都市国家構想の実現に当たっては、過疎地でも第5世代移動通信システム(5G)等のデジタルインフラの整備が必要であり、また、デジタル人材は東京圏に6割が集中していることから、デジタル格差が生じないよう地方における環境整備を推進するとともに、デジタル社会を支える人材の育成・確保に向けた地方の取組を支援すること。

(3) 急速に普及しつつある生成AIについて、適切な社会実装に向けルールづくりを早急に進めるとともに、地方公共団体が効果的に利活用できるよう、先進的事例や留意すべき事項等必要な情報提供を行うこと。

(4) 地方公共団体の情報システムの標準化など地方の負担を伴う取組の実施に当たっては、地方の事務処理の実態や意見を踏まえた上で、標準化されたシステムへの円滑な移行等が可能となるよう、十分な人的・技術的支援、財政支援を講ずること。

 また、標準化に伴う運営経費等の減少額は、地方行政のデジタル化や住民サービスの維持・向上のための経費に振り替えるなど、地方財政計画において適切な措置を講じること。

(5) 情報通信技術に関する専門的な知識・技術を有するデジタル人材を2026年度までに230万人育成する目標の達成に向けて、地方においてもデジタル人材を輩出できるよう、AIやデータサイエンスの専門人材の育成や教育プログラムの開発に取り組む大学への支援等を強化すること。

 また、市町村のデジタル人材不足が特に課題となっていることから、都道府県による市町村支援の取組に対して、財政的・技術的支援を充実すること。

(6) 法令等に係るアナログ規制の見直しを着実に進めるとともに、地方公共団体におけるアナログ規制の見直し等への支援を充実すること。

(7) 国民誰もが行政手続や各種サービス等に円滑にアクセスすることができるよう、年齢、障害の有無、居住地域等による利用機会の格差等のデジタルデバイドを是正するとともに、地方公共団体の取組への支援を充実すること。

(8) 複雑・巧妙化するサイバー攻撃から個人情報や機密情報を守り、詐欺やなりすまし等によるサイバー犯罪を防止するため、サイバーセキュリティ対策に万全を期すとともに地方公共団体の取組への支援を充実すること。

(9) 教育、医療、農林水産業の分野やモビリティの高度化等におけるデジタル化の推進に当たっては、安全性を確保した上で規制緩和や制度の見直しを行い、国民の利便性向上を図ること。

(10) 5Gについては、2030年度までに人口カバー率99lなどの目標達成に向けて、地方を含むエリアで早期にサービスが開始されるよう、地方部における国庫補助事業を充実するとともに、事業者自らが、地域間で格差なく基盤整備を進められるよう、支援を充実すること。

 なお、地方公共団体に負担が生じる場合には財政支援を充実すること。

 また、ローカル5Gを活用した地域課題解決への支援を拡充するなど普及促進に向けた取組を進めること。

(11) 過疎地域や離島等の条件不利地域はもとより、全ての地域で情報通信技術がもたらす利便性を享受できるよう、光ファイバの整備等の促進に対する財政支援を充実すること。

(12) 地方公共団体が整備した光ファイバ等情報通信基盤の安定的な運用を確保するため、維持管理・更新・災害復旧等に対する財政支援を充実すること。

(13) インターネット上の誹謗中傷行為は、人権上、極めて悪質な情報も存在し、深刻な社会問題となっていることから、防止のための広報啓発活動及び被害者への相談体制の強化を図ること。

 また、誹謗中傷行為に対し事業者がより自主的に取り組めるよう関係機関の連携強化を図ること。