全国都道府県議会議長会

地域経済の持続的な成長の実現に関する決議

令和5年10月26日 決定

 我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、個人消費が持ち直すなど緩やかに回復している。

 また、今年度の賃上げ率は30年ぶりに高水準となり、企業の設備投資も増加するなど、経済回復の前向きな動きが広がっている。

 しかしながら、8月の実質賃金は前年同月比2.5l減であり17か月連続で減少しているため、物価の動向によっては回復機運の低下が懸念される。

 こうした回復の動きを本格化させるには、適切な価格転嫁の促進、構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大等による経済の好循環を着実に推進し、地域経済全体の持続的な成長を実現していくことが重要である。

 一方、ガソリンの小売価格が過去最高値を記録し、今後もエネルギー価格の高騰や電力やガスの需給ひっ迫が懸念されることに加え、世界的な食料争奪の激化等により食料安全保障上のリスクも高まっていることから、迅速かつ機動的な対応も求められている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

1 エネルギー価格の先行きが不透明な中にあって、今後とも住民生活や経済活動への影響を最小限に抑えるよう、燃料油価格や電力(大規模工場等で使用する特別高圧電力を含む)・都市ガス・LPガス料金の負担抑制は、全国一律の対策が講じられるよう国が責任を持って対応すること。

 また、物価高により依然として厳しい状況にある生活困窮者等への支援を着実に実施するため、新たな経済対策に係る補正予算を早期に成立させ、地域の実情に十分配慮した物価高騰対策を講ずること。

2 賃金の引上げについては一定程度なされてきたが、今後も物価上昇が続くものと見込まれることもあり、企業における物価上昇に負けない賃上げを促進するための税財政上の支援の抜本的強化を図ること。併せて、最低賃金については、都市と地方の格差是正に配慮しながら、更なる引上げに向けて取り組むこと。

3 地域経済を支える中小企業・小規模事業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)及びGX(グリーントランスフォーメーション)への対応、業態の転換、異業種との連携、新たな事業の創出などの取組に対する支援の強化を早期に実施すること。

 また、成長分野への労働移動が円滑に進むよう、働きながら新たなスキルを学べる環境の整備など「人への投資」に係る施策の抜本的強化を早期に実施すること。

4 物流業や建設業において2024年度から時間外労働の上限規制が適用され、大幅な人手不足が生ずると見込まれることから、ドライバー等の賃金水準向上による人材確保、DXを活用した共同配送による効率化、建設業における適正な工期設定や工程合理化による生産性向上などの取組を推進すること。

5 地域の人手不足を解消するため、技能実習制度及び特定技能制度の見直しに当たっては、外国人材がキャリアアップしつつ中長期的に活躍できる制度を構築するとともに、対象業種についても生産現場等の実情を十分踏まえ、更なる拡大を図ること。また、外国人材が特定の産業分野や大都市等の特定の地域に過度に集中することのないよう十分配慮すること。

6 円安の利点を活かし対日直接投資の促進を図るとともに、外国企業が求める人材の育成、外国企業と地域の企業・大学等を結びつける支援及び外国人の生活環境の向上などの取組を強化すること。

7 コロナ禍を契機とする旅行ニーズの多様化に対応した観光需要の喚起を図る施策を充実するとともに、円安を活かしたインバウンドの回復等に向けた施策を強力に実施し、観光消費の増大を図ること。

 また、観光を通じた地域活性化のため、地方への誘客促進を図るとともに、地方の様々な文化資源を活かした文化観光の推進への支援を充実すること。

 併せて、特定の観光地におけるオーバーツーリズムなどに配慮し、持続可能な観光を推進すること。

8 食料安全保障の強化を図るため、小麦・大豆等の穀物、肥料・飼料等の生産資材の輸入依存からの構造転換を加速させること。

 また、農林水産事業者が安心して生産に取り組めるよう、生産・流通コスト等を踏まえ、再生産に配慮した適正な価格形成・取引を推進するための仕組みを構築すること。

 併せて、世界の食料需給がひっ迫し輸入が途絶えた際に、平時に輸出している農産物を国内消費に振り向けることも想定し、農産物の更なる輸出拡大の促進を図るなど、強固な食料供給基盤の確立に向けた対策を講ずること。

以上、決議する。

 令和5年10月26日

                                        全国都道府県議会議長会