全国都道府県議会議長会

デジタル化と地方創生の推進に関する決議

令和5年10月26日 決定

 地方においては、人口減少と高齢化が急速に進行しており、生産年齢人口の減少による様々な社会的・経済的な課題が深刻化している。

 こうした課題を解決し、地域の持続可能性を高めるためには、国と地方が一体となってデジタルの力を積極的に活用し、地方に魅力的な雇用機会を創出するとともに、地方への人の流れをつくり東京圏への過度の一極集中を是正するなど「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けた取組を強力に推進していく必要がある。

 特に、地方のデジタル化を推進する上では、マイナンバーカードの安全・安心の確保、光ファイバや5G(第5世代移動通信システム)等の未整備地域の解消、デジタル人材の確保・育成が不可欠であることから早急に取り組むことが重要である。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

1 デジタル田園都市国家構想の実現に当たっては、過疎地でも5G等のデジタルインフラの整備が必要であり、また、デジタル人材は東京圏に6割が集中していることから、デジタル格差が生じないよう地方における環境整備を推進するとともに、デジタル社会を支える人材の育成・確保に向けた地方の取組を支援すること。

2 急速に普及しつつある生成AIについて、適切な社会実装に向けルールづくりを早急に進めるとともに、地方公共団体が効果的に利活用できるよう、先進的事例や留意すべき事項等必要な情報提供を行うこと。

3 マイナンバーカードの利便性向上に向け、関係機関との適切な連携のもと、国民が利便性向上を実感できる仕組みづくりを進めること。

 マイナンバー総点検は、地方公共団体の実情を踏まえて行うとともに、確実な点検を行うためにも作業期限について柔軟に対応すること。また、点検作業へ適切な支援を行い、地方に財政的な負担が生じることのないよう確実に措置するとともに、総点検等の結果を踏まえて再発防止のための万全の対策を講ずること。

4 地方拠点強化税制の拡充、東京圏から本社を移転した企業への交付金制度の創設等の取組により、企業や大学の地方移転を推進するとともに、企業誘致に取り組む地方公共団体に対する支援を拡充すること。

 また、地方創生移住支援事業・起業支援事業について、移住対象者の拡大、移住元の地域の拡大、就業や起業の要件緩和など、実施状況を踏まえた運用の弾力化等を図るとともに、制度の周知を充実すること。

5 東京圏での地方移住への関心の高まりを、新しい人の流れの創出につなげ、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」で掲げた2027年度に地方と東京圏との転入・転出を均衡させるという目標の達成に向け、「デジタル田園都市国家構想交付金」を充実・確保するなど、テレワークを活用した移住等の取組を推進すること。

6 女性が働きやすい環境整備のため、大企業に義務付けられている男女間賃金格差の開示の対象企業の拡大及び同一労働同一賃金の更なる徹底を図るとともに、「女性デジタル人材育成プラン」の着実な実施など、男女間賃金格差の解消に向けた取組を推進すること。

7 スタートアップが全国で創出され、地方において幅広い仕事ができる社会を実現するため、スタートアップへの資金調達支援等を充実すること。

8 脱炭素社会の実現に向けて、洋上風力発電や地熱発電など地方が取り組む再生可能エネルギーの導入拡大や水素・アンモニアの利活用拡大を図るための研究開発の推進などの取組への支援を拡充すること。

9 地方創生に不可欠な地域間の交流や観光基盤の構築のため、地方におけるインフラ整備を推進するとともに、地域の実情に応じた利便性と持続可能性の高い地域公共交通の実現に向けた支援を充実すること。

以上、決議する。

 令和5年10月26日

                                        全国都道府県議会議長会