全国都道府県議会議長会

2 地方税財源の充実強化について

令和5年10月26日 決定

 地方公共団体は深刻な少子化への対策、高齢化に対応した社会保障サービスの提供、疲弊した地域経済の回復と活性化、デジタル社会の実現、防災・減災対策等増大する地域の課題に責任をもって対応し、活力ある地域社会の実現に向けて積極的に取り組むことが求められている。

 また、物価高の影響を大きく受ける生活困窮者や事業者等に対する支援、新型コロナウイルス感染症の5類移行後の対応や次の感染症危機への備えなど地方の財政支出は一層拡大するものと見込まれるため、十分な地方税財源の確保が必要である。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 生活困窮者や事業者等への支援や物価高騰対策など目下の経済情勢に対応した取組を機動的に行えるよう必要な財政措置を講ずること。

(2) 国が全国一律で行うこども・子育て政策の強化に伴い生ずる地方負担の財源については、国の責任において確実に確保すること。

 さらに、地方公共団体が地域の実情に応じて創意工夫を活かした独自のこども・子育て政策を実施することができるよう、必要な歳出を地方財政計画に計上すること。

(3) 地方が責任を持って、地域の実情に沿ったきめ細かな行政サービスを十分担えるよう、社会保障関係費など今後も増大する財政需要を適切に地方財政計画に反映するとともに、安定的な財政運営に必要な地方一般財源総額を確保すること。

(4) 地方交付税については、引き続き、財源保障機能と財源調整機能の両機能が適切に発揮できるよう、その総額を確保すること。また、法定率の引上げを含めた抜本的な改革を行うこと。臨時財政対策債については、その発行額を更に圧縮するとともに、償還財源を確実に確保すること。さらに、中長期的な視点で、臨時財政対策債等の特例措置に依存しない持続可能な制度を確立すること。

(5) 地方自治法改正を踏まえた会計年度任用職員への勤勉手当の支給や病院等を含めた地方公共団体の施設の光熱費高騰に係る対応について、適切な財政措置を講ずること。

(6) 地方が担っている役割と責任に見合うよう、地方税の一層の充実を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収の安定性を備えた地方税体系を構築すること。

(7) 地方公共団体の基金は、災害や公共施設等の老朽化対策、税収-21減等不測の事態への機動的な財政運営の備えとして、行財政改革や歳出抑制を進めることにより造成したものであり、その残高をもって一律に地方財政計画の圧縮や地方交付税の削減を行わないこと。

(8) 法人事業税については、外形標準課税の対象法人数の減少を踏まえ、公平性や税収の安定的確保の観点から、小規模な企業への影響に配慮しつつ、対象法人の設定について事業活動の実態を踏まえて見直すこと。また、電気供給業、ガス供給業などに対する収入金額課税は、受益に応じた負担を求める外形課税として定着し、地方税収の安定化に大きく貢献しているとともに、電気事業は大規模発電施設等、ガス事業は液化ガス貯蓄設備等を有し、事業活動に当たり多大な行政サービスを受益していることから、現行制度を堅持すること。

(9) 今後の自動車関係税の見直しに当たっては、電気自動車の比重が大きくなる中、自動車税が財産税的な性格や道路損傷等に係る負担金的な性格を有することも念頭に置き、引き続き、地方公共団体にとって道路の整備・維持管理に関する財政需要が高いことから必要な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう留意すること。

(10) ゴルフ場利用税については、アクセス道路の整備・維持管理、ゴルフ場から排出されるごみ処理、地すべり対策等の災害防止対策等、特有の行政需要に対応していること、また、その税収の7割が所在市町村に交付金として交付されており、特に財源に乏しい中山間地域の当該市町村にとっては貴重な財源となっていることから、現行制度を堅持すること。