全国都道府県議会議長会

1 少子化対策・子育て支援の抜本的強化について

令和5年10月26日 決定

 令和4年の出生数は約77万人で過去最少、合計特殊出生率は1.26で過去最低となり、我が国の少子化は危機的な状況にあることから、一刻も早くこの流れを食い止めなければならない。

 このため、政府は次元の異なる少子化対策について検討を進め、6月13日、今後3年間で集中的に取り組むこども・子育て支援の加速化プランを盛り込んだ「こども未来戦略方針」を閣議決定したところである。

 政府は年末までに同方針の具体化を進めることとしているが、少子化が待ったなしの課題であることを踏まえれば、方針に明記されていない子育て支援策も含めて早急に対策の抜本的強化を図るとともに、中長期的に対策を推進するための安定的な財源及び必要な地方財源を確保しなければならない。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 結婚、出産、子育て、教育、住宅政策など、ライフステージを通じ社会全体で子育てを支援する力強い総合的な対策を推進すること。

 また、これらの対策を具体化する「こども未来戦略」の策定に当たっては、地方の意見を反映し、真に実効性のある取組が展開できるよう努めること。

(2) 少子化対策に係る経済的支援については、地方公共団体の財政力による格差が生じないよう、国の責任において全国一律で実施すること。

(3) 少子化対策を中長期的に推進するため、企業も含めて社会全体で支えていく財源負担のあり方について、幅広く検討し、国民の理解を得て安定的な財源を確保すること。

(4) 国が全国一律で行うこども・子育て政策の強化に伴い生ずる地方負担の財源については、国の責任において確実に確保すること。

 さらに、地方公共団体が地域の実情に応じて創意工夫を活かした独自のこども・子育て政策を実施することができるよう、必要な地方財源を確保すること。

(5) 所得や雇用への不安、結婚観の変化や出会いの機会の減少等から、未婚化・晩婚化が進行していることを踏まえ、結婚につながる若者の所得増への取組の強化や、出会い・結婚をサポートする取組を継続するための支援を強化すること。

(6) 少子化に歯止めをかけるには、その要因の一つとも言われる、東京圏への一極集中の是正も必要であることから、子育て環境の良い地方への移住や企業の地方移転、テレワークの活用促進等の施策を推進すること。

(7) 不妊治療については令和4年度から保険適用が開始されたところであるが、なおも保険適用外となる治療も含め、引き続き利用者の経済的負担の軽減を図ること。

(8) こどもの医療費助成については、国民健康保険の国庫負担の減額調整措置が廃止されることとなったが、更に子育て世帯の経済的負担を軽減し、安心してこどもの医療を受けられるようにするため、高校生までの医療費無償化を行うなど全国一律の医療費助成制度を創設すること。

(9) 幼児教育・保育については、待機児童対策により量の拡大が進んだ一方で、現場において不適切な事案が発生していること等を踏まえ、更なる質の向上等を図る必要があることから、幼稚園教諭・保育士の確保のための処遇改善や育成のための研修及び保育所等の施設整備費への財政支援を充実すること。

 また、放課後児童クラブについては、施設整備及び放課後児童支援員確保への財政支援を充実し、待機児童の解消を図ること。

(10) 学校給食費の無償化の検討に当たっては、自治体により給食の実施状況、給食費や食材の調達状況等が異なることを把握した上で、保護者負担の在り方について国民的な理解が得られるよう留意すること。

(11) 中小企業における従業員の仕事と家庭の両立が図られるよう、一般事業主行動計画の策定及び企業主導型保育事業に係る財政支援を充実すること。

(12) 児童虐待の増加を踏まえ、SNS等を活用した相談支援体制の強化を図るとともに、児童相談所の深刻な人材不足の解消に向けて児童福祉司等の人材確保や専門性向上に係る支援を充実すること。

 また、児童委員、医療機関、警察、教育委員会、児童相談所等の関係機関で構成する要保護児童対策地域協議会に対する支援を講ずること。