全国都道府県議会議長会

2 地域医療提供体制の強化について

令和5年10月26日 決定

 我が国の医療を取り巻く環境は、少子高齢化の進行、国民の医療に対するニーズの多様化など著しく変化しており、これに対応した良質で国民が安心して暮らせる医療提供体制の確保が強く求められている。

 特に、地方の医師不足や地域別・診療科別の医師偏在を早期に解消し、救急医療や周産期医療を確保することなどに加えて、新型コロナウイルス感染症の再拡大や新たな感染症の発生にも十分対応できることが重要であることから、地域における医療提供体制を強化することは喫緊の課題となっている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 臨時的な医学部定員増の措置については、地方における深刻な医師不足が解消されるまで継続すること。

 また、各都道府県の「医師確保計画」の実効性を高めるため支援策の充実を図ること。

(2) 地域別、診療科別の医師の偏在を解消するため、医師不足地域への医師の派遣など実効性ある対策を講ずるとともに、産科・小児科等特定診療科の診療報酬の適切な見直しによる処遇の改善や就労環境の改善等についても引き続き推進すること。

 なお、医師の働き方改革の推進に当たっては、医師不足による診療体制の縮小を招くことがないよう、地域における医師確保・偏在対策の着実な進展を前提として一体的に進めること。

 また、地域の実情を十分に踏まえた実効性のある対策を講ずるため、今後起こりうる感染症の流行を見据え、引き続き地域医療確保について地方と十分に協議を行い、地方の意見を施策に反映すること。

(3) 医師不足の深刻な地域の中小規模病院において、総合診療医を育成・定着する仕組みを構築すること。

 また、専門医制度の運用に当たっては、更なる地域偏在、診療科偏在を招くことがないよう専門研修プログラム等について、地方の意見を十分反映すること。

(4) 近年、自然災害が激甚化し、甚大な被害が発生していることから、被災した医療施設の早期復旧を図るため、十分な人的・財政支援を行うこと。

(5) ドクターヘリについては出動件数の増加により、委託先の運行事業者の負担が増大していることから、安定的運用を図るため、事業者に対する補助金の基準額を見直すなど、支援を充実すること。

(6) 新型コロナウイルス感染症の後遺症について、治療法に対応できる医療機関の拡充、原因究明と新たな治療法の確立などの取組を推進すること。

(7) 人と動物共通の新たな感染症への対応力の強化のため、全ての動物の感染症等の調査研究、医薬品開発、水際防疫等を統合して実施する体制を確立すること。

(8) 国保総合システムの更改に伴う費用については、財政基盤が脆弱な市町村等保険者に新たな財政負担が生じないよう、十分な支援を講ずること。