全国都道府県議会議長会

5 包摂社会の実現に向けた取組について

令和5年10月26日 決定

 新型コロナウイルス感染症は、地域社会のつながりの希薄化や社会環境・家庭環境の急激な変化を生じさせ、孤独・孤立、貧困、失業、DV被害や自殺者の急増などをもたらし我が国に暗い影を落とした。

 また、長引く物価高騰の影響等により経済・雇用情勢は先行きが不透明であり、精神的・経済的不安を抱える者が増加し、孤独・孤立などの問題が更に深刻化するものと思われる。

 この状況を打破するためには、若者、女性、高齢者など誰もが社会に参画する機会を得て、夢や希望、多様な幸せを感じられる包摂社会を実現する必要がある。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 孤独・孤立対策については相談窓口の整備、アウトリーチ型の支援、支援団体・個人に対する支援等の充実を図るとともに、セーフティネット強化交付金など地域の実情に応じた取組を支援するための各種支援の充実を図ること。

 特に、地方公共団体等による自殺防止の取組に対する財政支援を充実するとともに、若者や女性へのきめ細かい支援を講ずるなど、自殺防止対策を強化すること。

(2) 女性がデジタル分野をはじめ各分野においてより一層活躍できるよう、新たなスキルの習得への支援を充実するとともに、テレワークなど柔軟な働き方を促す就労環境の整備等を推進すること。

(3) 認知症の人を含めた国民一人一人が相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する社会を実現するため、6月に成立した認知症基本法に基づき、国と地方公共団体が一体となり、認知症の予防に資すると考えられる運動不足の改善、生活習慣病の予防等の取組を推進するとともに、認知症の人の社会参加の機会確保や意思決定の支援、本人や家族の相談体制の整備、認知症の研究推進、正しい理解の促進などの認知症施策を推進すること。

(4) 勤労者皆保険を実現するため、企業規模要件の撤廃など短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大や個人事業所の非適用業種の解消を早期に行うこと。

 また、個人事業主であっても実態は雇用に近い働き方をしているフリーランス・ギグワーカーなどの社会保険の適用の在り方についても早期に検討を進めること。

(5) 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ行われてきた生活福祉資金貸付制度における特例貸付については、償還が困難な生活困窮世帯が存在することから、償還要件の緩和等の支援を講ずること。

(6) アスベストによる建設業従事者の健康被害については、被害者に対する給付金制度を見直すなど救済措置を充実するとともに、今後の被害発生を防止するため、建物の解体におけるアスベストの飛散防止対策等を拡充すること。