全国都道府県議会議長会

1 防災・減災対策、国土強靱化の充実強化について

令和5年10月26日 決定

 平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風(台風第19号)、令和2年7月豪雨等による風水害など、自然災害が激甚化・頻発化しており、多くの尊い人命が失われ、全国各地で住民生活の安全・安心が脅かされる事態が生じている。

 また、本年も大雨、台風、地震、大雪により社会資本等に大きな被害が発生し、人流・物流が遮断され、住民生活や産業に深刻な影響を与える事態が生じたところである。今後も南海トラフ地震や首都直下地震などによる甚大な被害の発生が懸念されることから、大規模自然災害に備えた強靱な国土づくりに向けた取組を迅速に進め、住民の安全と安心を確保することが急務となっている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 資材価格の高騰や建設技能労働者の賃金水準の上昇が続く中でも防災・減災対策、国土強靱化に資する社会資本整備を戦略的かつ計画的に推進するため、「第5次社会資本整備重点計画」を踏まえ、個別の補助金、防災・安全交付金及び社会資本整備総合交付金など必要な予算を安定的かつ継続的に確保するとともに、地方負担分については地方財政措置を的確に行うこと。

(2) 頻発する大規模自然災害に備えるため、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づく土砂災害や地震・津波による被害の防止対策等を資材価格が高騰する中でも着実に実施することができるよう、必要となる予算を当初予算において安定的かつ継続的に確保すること。

 なお、5か年加速化対策後も、本年6月に改正された国土強靱化基本法及び7月に閣議決定された新たな「国土強靱化基本計画」を踏まえ、別枠による必要かつ十分な予算を確保するなど、国土強靱化の取組を中長期的かつ継続的に進めていくこと。

 また、地方公共団体が「国土強靱化地域計画」に基づく事業を着実に実施することができるよう、交付金、補助金の重点配分などによる財政支援を充実するとともに、市町村における地域計画の策定に向けた職員に対する研修などの支援を充実すること。

(3) 道路、河川、港湾、海岸、空港などの社会資本が、災害によって壊滅的な被害を受けることで、資材等の輸送を困難にし、被災地域の早期支援や迅速な復旧作業の妨げとなることから、平時から災害に対する備えとして、耐震化などの事前防災対策を推進すること。

 また、全国的に社会資本の老朽化が進行していることを踏まえ、中長期のトータルコストの縮減と平準化を図りつつ、維持管理と更新を計画的かつ着実に行うこと。

(4) 改正された「宅地造成及び特定盛土等規制法」に基づいて危険な盛土への対策を行う地方公共団体への支援を再発防止の観点から引き続き実施するとともに、盛土に関係する土石流災害の総合的な発生防止対策を実施すること。

(5) 河川管理者だけでなく流域全体のあらゆる関係者が協働し水害を軽減させる流域治水の取組に対する財政支援、技術的支援を充実すること。

 特に、近年の災害では本川のみならず支川の周辺地域にまで大きな被害が生じたことから、流域全体の再度災害防止を図るため、遊水地建設による地域の農業者への影響や住民の負担等にも配慮しながら、治山事業などを始めとして関係省庁間で連携しつつ横断的な対策を講ずること。

 なお、河川氾濫時における被害を軽減するため、地方公共団体が河川等の浚渫を地域の実情に応じて適切に実施できるよう、令和6年度に期限を迎える緊急浚渫推進事業について期間を延長すること。

 また、災害リスクの高い土地の利用規制や安全な土地への移転誘導などに取り組む地方公共団体への支援を充実すること。

 さらに、利水ダムにおいて事前放流を的確に実施することができるよう、ダムの放流施設の整備・改良に対する支援の充実を図るとともに、線状降水帯等による降雨量やダムへの流入量の予測精度の向上を図り、迅速かつ正確な情報提供を行うこと。

(6) 近年の豪雨災害では各地で内水氾濫が発生していることを踏まえ、内水浸水想定区域図の作成や下水道施設および雨水貯留施設の整備に対する支援を充実すること。

 また、河川機械設備については、排水能力向上など機能強化、適切な予防保全及び効率的な更新に対する支援を充実すること。

(7) 風水害、地震等により甚大な被害が発生した河川、道路等のインフラの復旧について、被災自治体に対する十分な財政支援、技術的な支援を講ずること。

 また、河川の直轄管理区間における災害復旧事業の早期完了を図るとともに、地方が管理する河川のうち、特に被害規模が大きく早急な対応が必要な河川については、国の施行により早期復旧を図ること。

 さらに、橋りょうの流失等により運休が生じている鉄道路線の早期復旧を図るため、事業者に対する財政支援を充実すること。

(8) 震災に強いまちづくりのため、庁舎、学校、住宅、上下水道施設及びため池などの耐震診断・耐震改修に係る費用に対する補助限度額の引上げなどの財政支援を充実すること。

(9) 高齢者、障害者及び避難に時間を要するこども等の災害時における要配慮者が入所、通所する社会福祉施設等について、耐震化や高台移転に対する支援を行うとともに、その周辺地域において、津波や風水害等の自然災害に強い避難施設の整備を促進すること。

 また、被災した要配慮者の受入先確保のため、福祉避難所の指定を促進できるよう、施設整備やバリアフリー化などに対する財政支援を充実すること。