全国都道府県議会議長会

2 観光の更なる活性化の推進について

令和5年10月26日 決定

 我が国の観光需要は、新型コロナウイルスの影響により大幅に減少したものの、全国旅行支援など国内需要喚起策の実施や水際対策の緩和等さらには、本年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが5類へ移行したことにより国内旅行・インバウンドの両面で回復してきている。

 世界的な旅行需要の回復が見込まれる令和7年には大阪・関西万博など観光の起爆剤となる大型イベントが開催される。

 この好機を逃さず観光立国の推進を図り、全国津々浦々の観光産業にその恩恵が最大限行き渡るよう、国内外の観光旅行者を魅了する自然、文化、食など地域の観光資源の磨き上げや発掘、効果的な情報発信等を通じた地方の観光地への誘客を一層促進する必要がある。

 一方で、一部の観光地で観光旅行者の急増等によりオーバーツーリズム問題が発生していること等を踏まえ、地方誘客の促進を推進しつつ、地域住民や自然環境等にも配慮した観光施策が重要である。

 また、近年、地震や台風、集中豪雨など、全国各地で深刻な災害が相次いでおり、被災地域の観光産業の復興に向けた支援も必要である。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 国内旅行については、人口構造の変化、個人の価値観やライフスタイルの多様化を踏まえ、年齢や障害の有無等に関係なく旅行を楽しめるユニバーサルツーリズムを推進するとともに、ワーケーション等の新たなニーズにも対応した観光需要の喚起を図る施策を充実すること。

 また、観光需要の特定時期への集中が旅行者の満足度低下や観光産業の低い生産性等の要因となっていることを踏まえ、休暇を取得しやすい職場環境の整備等を通じて休暇の分散化を図り、平日及び閑散期における観光を促進すること。

(2) 新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだインバウンドを回復、拡大させるため、国際クルーズの受入促進や広域観光周遊ルートの形成、国・地域等の特性に応じた情報発信の実施など地方における誘客促進に向けた取組への支援を充実・強化すること。

 また、訪日外国人旅行者の観光消費を促すよう、宿泊施設や観光施設の改修など、観光地の面的再生・高付加価値化に向けた取組に対して継続的な支援を充実すること。

 なお、ALPS処理水放出によるインバウンドへの影響に関して、処理水放出は環境に影響を与えるものではないことや、我が国の観光資源の魅力について諸外国に積極的に発信していくこと。

(3) 多くの集客交流が見込まれるビジネスイベント(MICE)などの誘致に対する支援を充実すること。

(4) 魅力ある観光地の形成促進のため、伝統、文化、景観など地域資源の活用・保全等に対する支援を充実すること。

 また、訪日外国人旅行者の文化・自然体験等に対する関心の高まりを踏まえ、地域固有の歴史・文化等の魅力を伝える通訳ガイド等の育成・確保の取組に対する支援を充実するとともに、地域で気付かれていない観光資源の発掘及びその魅力に係る情報発信を推進すること。

 さらに、観光地域づくりの舵取り役を担う法人(DMO)に対する支援を充実するとともに、コロナ禍や風水害、地震等により打撃を受けた地域の観光関連産業に対する資金繰り等の支援を引き続き講ずること。

(5) 観光旅行者の急増等により発生するオーバーツーリズムの対策として、観光地の混雑緩和や観光旅行者へのマナー啓発等の取組に対する支援を充実するなど、地球環境に配慮し、地域住民と観光旅行者の双方がメリットを享受できる持続可能な観光を推進すること。

(6) 査証(ビザ)要件の更なる緩和を図るとともに、地方空港及び港湾における税関・出入国管理・検疫(CIQ)の体制を整備・拡充すること。

(7) 無料Wi-Fi環境の整備、多言語による情報提供の充実、キャッシュレス決済の環境整備、客室等のバリアフリー化、観光地までの交通手段の充実、災害時における迅速な情報提供など、訪日外国人が旅行しやすい環境の整備を更に推進すること。

(8) 国際観光旅客税については、これまでも地方公共団体が観光資源の魅力向上等に対し、様々な取組を行っていること等を踏まえ、その税収の一定割合を、自由度が高く創意工夫を活かせる交付金等により地方に配分すること。