全国都道府県議会議長会

1 食料安全保障の強化について

令和5年10月26日 決定

 世界的な人口の急増、気候変動等による農産物の不作の発生、新興国での食料需要の高まり、ロシアのウクライナ侵略による小麦や肥料等の輸出停滞などにより、近年世界的な食料不安が高まっている。

 こうした中で、我が国の食料自給率は38lと先進国の中でも最低水準であり、輸入依存からの脱却も含め強固な食料供給基盤を確立することが喫緊の課題となっている。

 そのため、全ての人が、いついかなる時も、食料を十分に入手できるよう、食料・農業・農村基本法の見直しをはじめ食料安全保障の強化に向けた施策を強力に推進する必要がある。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 食料・農業・農村基本法については、本年9月の食料・農業・農村政策審議会による答申を踏まえ、輸入に依存しない国内農業生産の増大を基本とした食料安全保障の確立に向け見直しを行うこと。

 なお、不測時の安全保障の強化については、生産者や消費者の立場を十分踏まえ結論を出すこと。

(2) 米は100l自給可能であり、食料安全保障の一端を担うものでもあるため、真に実効性のある消費喚起を行うなど、需要拡大を推進すること。

 また、加工用米や米粉用米の品種開発や生産、ニーズが高まっているパックご飯や米粉パンなどの米加工品の開発や販売、輸出拡大への支援を充実させること。

(3) 生産者や集荷業者・団体が主体的に需要に応じた作付け判断ができるよう、米の需給に関する情報提供を行う等、引き続き国が米の需給及び価格の安定に対する役割を果たすこと。

 また、ミニマムアクセス米の販売に当たっては、加工用米の需給に影響を与えないよう、対策を講ずること。

 なお、米の現物市場の創設に当たっては、需給実態を的確に反映した価格指標を示すことができるようにすること。

(4) 小麦・大豆の生産拡大及び品質の安定化を図るため、作付の団地化及び生産性向上に資する技術・機械や優れた加工適性を持つ品種の導入などへの支援を充実すること。

 また、食品事業者が輸入原材料から国産原材料へ切り替える際の製造ラインの変更・増設などへの支援を充実すること。

(5) 肥料、飼料等の生産資材や燃油、ガスの価格高騰の影響を受ける農林水産事業者への支援を継続・拡充すること。また、輸入依存の高い生産資材については、国内資源の活用促進や備蓄等による安定的な供給体制の整備を強化するとともに、省エネルギー化に取り組む生産者に対しての支援を充実させること。

 なお、飼料用米については、種子の確保対策等による支援を継続することに加え、保管・流通施設等の確保に向けた支援の充実・強化など飼料用米の生産や利活用に取組やすい環境を総合的に整備すること。

(6) 経済連携交渉、WTO農業交渉等の国際貿易交渉に当たっては、食料の安定供給、食料自給率の維持及び農林水産物の国内生産量等に配慮し、農林水産業に影響を及ぼすことのないよう臨むこと。

(7) 食品の売れ残りや食べ残しによる食品ロスを削減するため、「てまえどり」等が促進されるよう、消費者の意識向上を図るための啓発を強化すること。

 また、加工食品等の食品ロスを削減するため、消費者に対し賞味期限への理解を深める啓発を行うこと。

 さらに、フードバンク活動を行う団体がこども食堂等に食品の提供をしやすくするため、広域的な連携による食品の受入・提供の拡大などの取組に対する支援を充実すること。

(8) 国産の農林水産物が積極的に選ばれるよう、消費者の理解醸成に努めること。また、再生産に配慮された適正な価格形成実現に向けた仕組みを構築するとともに、物流コスト低減に向けた施策を講ずること。