全国都道府県議会議長会

3 食の安全・安心を確保する制度の拡充強化について

令和5年10月26日 決定

 国内における豚熱、高病原性鳥インフルエンザの発生、食品の偽装表示事件等により、健康・生命に深く関わる「食」の安全・安心に対する国民の関心は、依然として高いものとなっている。

 特に、令和2年以降毎年発生している高病原性鳥インフルエンザについては、鶏卵の価格高騰や供給不足を引き起こし消費者に大きな影響を与えている。

 また、我が国では、食料供給の多くを輸入に依存しており、輸入時の安全確保対策も重要な課題となっている。

 よって、次の措置を講ぜられたい。

(1) 家畜伝染病の発生及び感染拡大を防止するため、発生原因及び感染ルートを早期に解明するとともに、防疫作業に係る資材の広域的な備蓄・供給体制の構築、ワクチン開発に対する支援、殺処分の対象を限定できる分割管理の促進等、防疫・検疫体制を強化すること。

(2) 豚熱の防疫対策については、農場内へのウイルス侵入を防止するための舗装や設備改修等の支援を講ずること。

 また、ワクチン接種農場で感染が確認された場合の殺処分は、ウイルスの野外への拡散防止対策の徹底などの措置を講じた上で、感染リスクが極めて低いワクチン接種豚を対象外とするなど、全頭殺処分を緩和すること。

 なお、野生イノシシによる感染拡大を防止するため、経口ワクチンについて、効果的な散布方法の確立、数量の確保、早期国産化を図ること。

(3) 高病原性鳥インフルエンザは令和2年以降毎年発生しており、今後も発生リスクが高いと予想されることから、発生原因と感染ルートの早期解明、自治体が実施している各種防疫措置等に対する財政支援の充実、分割管理の促進、消費者風評被害の防止などの対策を講ずること。

 また、民間活力の活用や広域での自治体間の応援体制整備等、防疫体制強化に向けた仕組みづくりを早急に検討するとともに、必要な財政支援を講ずること。

(4) BSE安全確保対策について、リスク管理や対策の有効性に関する国民の理解浸透を図るとともに、検査体制の継続に必要な予算を十分に確保し、万が一BSEが発生した場合の対策について万全を期すること。

(5) 家畜衛生、公衆衛生及び産業動物診療等の現場の中核を担う勤務獣医師の職責と業務量が増大する中、その人材確保が全国的な課題となっていることから、現下の公務員獣医師を始めとする勤務獣医師に求められている高度な専門能力と判断力にふさわしい処遇とするため必要な措置を講ずること。

(6) アサリの産地偽装事件と同様の問題が発生することがないよう、違反事案の速やかな発見のため全国的な流通経路の調査を継続的に実施するなど、関係省庁が連携して監視体制の強化等に取り組むこと。

 また、トレーサビリティについては、地方が迅速かつ正確にDNA検査に取り組めるよう技術的・財政的支援を講ずること。

(7) 外食における原材料の原産地表示については、事業者の自主的な取組を促すガイドラインの位置付けとなっているが、消費者に分かりやすい表示とするよう、表示の義務化など制度の強化を図ること。

(8) 遺伝子組換え種子を含まない種子の提供体制の確立や輸入の際のこぼれ落ち等による遺伝子組換え作物の自生防止対策を講ずるとともに、一般作物との交雑及び混入を防止するため、遺伝子組換え作物の生産及び流通段階での隔離を徹底する施策を充実すること。