全国都道府県議会議長会

新型コロナ対応に見る議員・議会の在り方

議長写真
令和2年5月
埼玉県議会議長

田村 琢実




 第123代埼玉県議会議長の田村琢実です。

 現在、新型コロナウイルス感染拡大を阻止するため、政府により緊急事態宣言が出され、各都道府県においても過去に例のない対応を迫られていると思います。

 今回の新型コロナ対応について埼玉県の状況を当てはめると、議会人として見えてくるものがあります。まず事前に、感染症対策についての計画がほとんど構築できていなかったこと。また、危機を想定した基金を積み立てていないこと。迅速な危機管理対応には財源(お金)が必要です。さらに、危機管理に関わる行政計画を議会の議決事件としていなかったこと等であります。これらは、事前に制度構築できなかった反省すべき点であります。

 また、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対策本部が立ち上がっている状況において、議員や会派の執行部への要望が散見されました。行政より住民に近い議員は、危機的状況の中で多くの御意見や御要望をいただきます。しかしながら、この要望を全て執行部に伝えていては、危機管理対応中の行政運営に支障を生じさせてしまいます。例えば、災害発生時に埼玉県議会議員93人全てが各々執行部に要望を行う状況を考えると、どれだけの負担となるかが想像できると思います。そこで、埼玉県議会では散見された状況を改善すべく、議会合意を行いました。議会で窓口を作り、議員や会派の意見等を一元化し、重要なものを精査して執行部に伝える仕組みであります。議員の提供できる重要なものとは、情報です。住民に一番近い議員が得た情報を伝えることは、危機管理対応ではとても重要であり行政運営の参考となります。

 さらに、対策本部に議会側の代表が参加していることも大切であります。執行部の対応状況を知ることができること。これによって、全議員に情報が伝わりますし、議会側が集約した情報等を一元化して伝えることができるからです。

 これらは、危機管理対応中の行政運営に支障を生じさせないという原則からくる議員・議会の対応の在り方であります。この対応を行う分、対策本部が閉鎖になった後の議員の役割はとても重要となります。平時における政策立案機能や監視機能を強化することはもとより、執行部における危機管理対応の検証を行い、政策を立案し、制度を設計構築し、今後の改善を図る必要があると考えます。

 今回の新型コロナ対応では、難しい状況が続いています。議員一人一人が議員・議会対応の在り方を理解し、行動することが大切だと思います。

埼玉県議会議長
田村 琢実(たむら たくみ)

プロフィール

生年月日

昭和46年10月15日

主な議員歴

平成19年4月〜
埼玉県議会議員(現在4期目)
議会運営委員会、産業労働企業委員会、文教委員会、福祉保健医療委員会、危機管理・大規模災害対策特別委員会、人材育成・文化・スポーツ振興特別委員会等の各委員長を歴任
令和2年3月
第123代埼玉県議会議長に就任