全国都道府県議会議長会

「いいけん、島根県」

議長写真
令和3年2月
島根県議会議長

中村 芳信




 昨年4月29日の朝、いつものように新聞を広げた私の目に飛び込んできたのは「早く会いたいけぇ、今は帰らんでいいけぇね。」という手書きの文字。地元紙と島根県が手掛けた大型連休中の帰省自粛をお願いする広告でした。これは私の住む県西部の石見弁バージョンで、県東部では出雲弁で掲載されていました。得体の知れない新型コロナウイルスへの不安、他県からの人の流れを拒み、疑心暗鬼になってしまいがちな時期のことでした。このメッセージは私たち県民の心に響いただけでなく、その年の秋には新聞広告賞を受賞しました。

 その後も、たくさんの夢を諦めなければならなかった高校3年生に向けた夏の広告には、各高校の部活の顧問の先生方のメッセージの寄せ書きが紙面いっぱいに広がり、成人式の中止や延期を余儀なくされた新成人には、県とふるさと島根定住財団により4ページにわたりエールが送られました。

 大人でも窮屈で寂しい思いをする中、若い世代に向けての応援には自分自身も励まされ、こうした思いやりの気持ちが広がる島根であるよう願ったところです。

 ご承知の通り、島根県は小さな県です。昭和26年に作られた県民歌「薄紫の山脈(米山治作詩・古関裕而作曲)」には「90万の県民の」という歌詞がありますが今では70万人を下回る程人口減少が進んでいます。

 これは多くの自治体で課題となっていることと存じますが、本県でもなんとか少子化を食い止め、人を呼び込める流れを作ろうと様々な取り組みを行っています。

 観光県として国宝松江城、縁結びの神様を祀る出雲大社、隠岐ユネスコ世界ジオパーク、世界遺産石見銀山、SLが走る山陰の小京都津和野、日本一の清流高津川など魅力的な場所はたくさんありますが、小泉八雲が松江を神々の国の首都と称したように神話が生活に根付いていて、それを脈々と受け継いできた日常がある、神話がエンターテインメントとなった石見神楽、神無月が神在月になる島根では、人々の暮らしが文化遺産として日々積み重ねられています。

 政府が進めるテレワークで地方移住が進むのではないかと言われますが、本県では、自分が本当に大切にしたいものや大切にしたい人のために時間を使うことができ、仕事、勉強、子育て、趣味など人生をトータルで充実させることができる、豊かにできる暮らしがあります。ゆったりとした時間と空間の中で大切な出会いがきっと見つかります。

 島根で自分らしく、自分のサイズで、生きていい。「いいけん、島根県」プロジェクトが始動しました。

島根県議会議長
中村 芳信(なかむら よしのぶ)

プロフィール

生年月日

昭和28年8月5日

主な議員歴

平成11年4月〜
島根県議会議員(現在6期目)
総務委員会、農水商工委員会、議会運営委員会の各委員長及び監査委員を歴任
平成28年5月
第85代島根県議会副議長に就任
令和元年5月
第78代島根県議会議長に就任